寿命を削ってまで働かない!

 残念ながら、残業時間は自分だけでコントロールできないかもしれません。ただし、「がんばりすぎた結果の健康負債は基本的に不可逆なもので、返済できない」という事実は知っておくべきです。

 心筋梗塞は一度起こってしまうと、心臓の動きが悪いまま息切れしやすい体質になり、元に戻ることはありません。脳梗塞であれば麻痺が残る場合もあります。

 人生100年時代、今後定年が70歳まで延長されることも予想される時代です。

 お金や時間、または仕事の能力がいくらあったとしても、「健康」でなければ満足に活用できません。

 今後想定される社会を踏まえると、目先の仕事よりも、「70歳、80歳まで働ける体作りをしておく」ことのほうがはるかに重要ではないでしょうか。

 また「月100時間の残業は当たり前」といった価値観の会社に所属している方であれば、自分の人生を長期的に考え、「退職」という選択肢も含め、一度見つめ直してください。

 仕事に没頭するのは素晴らしいことですが、忙しい中でも中長期的な健康のリスクマネジメントを心がけてください。

(本原稿は、森勇磨著『40歳からの予防医学 医者が教える「病気にならない知識と習慣74」』を編集・抜粋したものです)

【出典】
※1 Mika Kivimäki,et al. Long working hours and risk of coronary heart disease and stroke: a systematic review and meta analysis of published and unpublished data for 603,838 individuals. Lancet. 2015 Oct 31;386(10005):1739 46.