(1)ストーリーのテンポが抜群に良い

 非常に単純な分析ではあるのだが、言語の壁を超えるためにもこの点は大きいのではないかと感じる。日本語版ツイッターでも目立つのは「一気見した」「一気に完走」という感想だ。筆者の知人でも、途中まで試聴していた他のドラマシリーズをいったん保留にして見始めたところ、気づいたら「イカゲーム」を先に見終わっていたという人がいる。

 とにかくストーリーのテンポが良く、途中で飽きさせない。視聴者に「次はどうなるのだろう?」「これはなんの伏線なのか?」と思わせる箇所が1回の中に何度もあり、惜しみなくその小さな伏線が回収されていく。

 また、うまいなと思わされたのが、前半でゲーム参加者らの背景が明らかになる仕掛けだ。

 隔離された場所でのサバイバルゲームの場合、参加者たちの過去や素性はどうしても回想シーンや本人の語りに頼らざるを得なくなる。しかし『イカゲーム』では、ゲームのあるルールを使うことによって、参加者の背景説明をストーリーの中にうまく組み込ませた。脱北者、チンピラ、外国人労働者、落ちぶれたエリートと、どれもわかりやすいキャラクターだけに、最低限の背景描写だけで理解できるということもあるだろう。