アクルーアルの中身は、減価償却費と運転資本増価額

損益計算書の利益は、鵜呑みにはできない。質の高い利益かどうかを見極めるアクルーアル(会計発生高)とは?Photo: Adobe Stock

林教授 具体的には、損益計算書の特別損益を除いた税引き後当期純利益から営業キャッシュフローを引いて計算する。アクルーアルがマイナスとなる企業は、現金の裏付けのある質の高い利益を生成していると考えることができる。

アクルーアル(会計発生高)=特別損益を除いた税引き後当期純利益ー営業CF

カノン なぜ、特別損益を除くのでしょうか?

林教授 経常利益が大赤字の会社があるとして、その会社が土地を売って黒字になったとしても、その利益は一時的にすぎないよね。だから、異常な損益は省いて計算するんだ。

カノン なるほどね。

林教授 では、次の式を見てごらん。

カノン あれっ、これってどこかで見たことがある……。

税引き後当期純利益+減価償却費ー運転資本の増加額=営業キャッシュフロー

林教授 間接法によるキャッシュフロー計算書だね。つまり、アクルーアルの中身は減価償却費と運転資本増価額なのだ。

アクルーアル=税引き後当期純利益ー営業キャッシュフロー=運転資本の増加額ー減価額償却費

カノン そうですよね。

林教授 次に、A、B2社のキャッシュフロー計算書を使ってアクルーアルの意味を説明していこう。

林 總(はやし・あつむ)
公認会計士、税理士
明治大学専門職大学院 会計専門職研究科 特任教授
LEC会計大学院 客員教授
1974年中央大学商学部会計学科卒。同年公認会計士二次試験合格。外資系会計事務所、大手監査法人を経て1987年独立。以後、30年以上にわたり、国内外200社以上の企業に対して、管理会計システムの設計導入コンサルティング等を実施。2006年、LEC会計大学院 教授。2015年明治大学専門職大学院 会計専門職研究科 特任教授に就任。著書に、『餃子屋と高級フレンチでは、どちらが儲かるか?』『美容院と1000円カットでは、どちらが儲かるか?』『コハダは大トロより、なぜ儲かるのか?』『新版わかる! 管理会計』(以上、ダイヤモンド社)、『ドラッカーと会計の話をしよう』(KADOKAWA/中経出版)、『ドラッカーと生産性の話をしよう』(KADOKAWA)、『正しい家計管理』(WAVE出版)などがある。