利益が出たと喜んでも、現金の裏付けのない「質の低い利益」ではボーナスも支払えない

間接法によるキャッシュフロー計算書を見れば、良い利益か悪い利益か、利益の質がわかるPhoto: Adobe Stock

林教授 B社は税引き後当期純利益が1000万円でも、営業CFは2500万円だ。だから、余裕でボーナスも払えるし税金も納められる。だが、A社は利益が出ていても営業キャッシュフローがマイナス500万円だからお金がない。ボーナスは支払えないし、税金を支払うのに銀行から借金しなくてはならない。

カノン その利益って「まぼろし」ですね。

林教授 いいことを言うね。ドラッカーのいう「利益は幻想」とは意味が違うが、確かにこの場合の利益は「まぼろし」だね。

カノン ありがとうございます。

林教授 実際、A社のようなアクルーアルがプラスの中小企業は珍しくはないんだよ。利益が出たと喜んでも、それは現金の裏付けのない「質の低い利益」だから税金もボーナスも支払えない。

カノン 私、利益に対する考えがガラリと変わりました。

林 總(はやし・あつむ)
公認会計士、税理士
明治大学専門職大学院 会計専門職研究科 特任教授
LEC会計大学院 客員教授
1974年中央大学商学部会計学科卒。同年公認会計士二次試験合格。外資系会計事務所、大手監査法人を経て1987年独立。以後、30年以上にわたり、国内外200社以上の企業に対して、管理会計システムの設計導入コンサルティング等を実施。2006年、LEC会計大学院 教授。2015年明治大学専門職大学院 会計専門職研究科 特任教授に就任。著書に、『餃子屋と高級フレンチでは、どちらが儲かるか?』『美容院と1000円カットでは、どちらが儲かるか?』『コハダは大トロより、なぜ儲かるのか?』『新版わかる! 管理会計』(以上、ダイヤモンド社)、『ドラッカーと会計の話をしよう』(KADOKAWA/中経出版)、『ドラッカーと生産性の話をしよう』(KADOKAWA)、『正しい家計管理』(WAVE出版)などがある。