参院選の選挙資金を巡る疑惑で
板挟みに遭う岸田首相

 加えて、19年の参議院選挙における河井案里元参院議員による広島選挙区の買収事件を巡る板挟み問題も浮上している。

 党本部から河井陣営への1億5000万円の選挙資金投入については、岸田首相の地元・広島の事件であることから「経緯や資金の流れを解明し、首相のクリーンなイメージを売り出したい」(岸田派中堅)と期待の声も上がっていた。しかし、当時の党選対委員長だった甘利氏が再調査を否定。党広島県連の会長代理を務める中本隆志県議会議長からは「自民党として国民に謝罪し、二度と起きないようルールを決めて適切に運用することが必要だ」と突き上げを食らう始末である。

 自身の特技に「聞く力」を挙げる岸田氏は所信表明で、これまで書きためてきたという「岸田ノート」に触れた上で、国民の切実な声を踏まえて政策を断行していくと宣言した。政治不信、政治離れが進む中で岸田氏の寄り添う姿勢に好感を抱く人々は多い。だが、安全運転を重視して人事面でも政策面でも「岸田カラー」が見えないのも事実だ。

 政権内で影響力を増す「3A」の存在には、霞が関内からも「国民ではなく、『3A』の方ばかりを見るようになれば支持率はさらに下がる」(環境省幹部)と先行きを懸念する声もあがる。「早く行きたければ一人で進め。遠くまで行きたければ、みんなで進め」とのことわざを引用し、明るい未来を築こうと呼びかけた岸田首相。「八方美人」「優柔不断」との評も上がる政界で、「諸説紛紛」の道へ迷い込まないかとの懸念も尽きない。