東京五輪・パラリンピックが終わった途端に飛び出したのが日本大学医学部附属病院の建て替え工事をめぐる資金流出事件だ。日大と言えば、学生数が7万6000人もいる日本一のマンモス大学。事件はその日大の附属板橋病院の建て替え工事の設計を行った佐藤総合計画に24億円が支払われたが、うち2億円が大学の関連会社「日本大学事業部」の役員である日大理事の指示で密かに都内のコンサルタント会社に送金されていたという内容だ。コンサルタント会社は大阪府の医療法人の関連会社で、東京地検特捜部は背任容疑で日大本部や日大事業部、日大のトップである田中英寿理事長と理事の自宅に加え、医療法人の関連会社などを一斉に家宅捜索し、日大理事と医療法人の前理事長を逮捕した。
逮捕された日大の理事とは3年前、関西学院大学とのアメリカンフットボールの試合で起こった悪質タックル事件の際、口封じに動いた人物。一方、大阪の医療法人とは日本有数の規模を誇る医療法人「錦秀会」で、前理事長(9月に辞任)の籔本雅巳氏は安倍晋三元首相がいずれ引き継ぐ細田派の“タニマチ”として知られている。結果、マスコミの間では東京地検特捜部の狙いは、日大の実力者である田中理事長か、それとも錦秀会の籔本前理事長か、いやいや、安倍元首相への政治献金ではないかなど、捜査の行方を注目している。