8月1日施行の改正医薬品医療機器法(薬機法)により、医薬品などの効能や効果で虚偽・誇大広告をした企業に対する課徴金制度が導入される。導入のきっかけとなったのは、ノバルティスファーマが製造販売する降圧剤「ディオバン」で13年に発覚した虚偽広告をめぐる事件だ。ノバルティスがディオバンの臨床研究のデータを改竄し、より効果があるような嘘の広告を作成したという一大疑獄に発展した。
事件はディオバンの臨床研究で論文を執筆した京都府立医科大学や東京慈恵会医科大学など名だたる大学の教授らを巻き込み、医師たちにも捜査が及ぶ騒ぎとなった。そして14年6月、東京地検は臨床研究に関わっていたノバルティスの社員を逮捕し、会社とともに虚偽・誇大広告を禁止した薬事法(現薬機法)違反で起訴した。だが、判決は検察には予想外の結果だった。
東京地裁は17年3月に無罪とし、続く2審の東京高裁も18年11月に無罪を言い渡す。判決を不服とした検察側は最高裁判所に上告したが、最高裁は6月28日にそれを棄却、無罪が確定した。東京地検特捜部が手掛けた事件で全面無罪となる異例の展開で、検察側の完敗だった。製薬業界と医学界を揺がし、法改正にまで影響をもたらしたディオバン事件だが、無罪となったのはなぜなのか。