企業の競争力を測る物差しが「利益」から「炭素」に変わる――。非エコな企業はビジネスの参加資格すら得られず、“脱炭素地獄”に転落する危機にある。そこでダイヤモンド編集部では、統合報告書を開示している大手企業を対象に「炭素排出量と財務データ」をミックスさせた独自ランキングを作成した。特集『脱炭素地獄』では、脱炭素による「脱落危険度」が高い企業の総合ランキングを抜粋して公開する。(ダイヤモンド編集部副編集長 浅島亮子)

東証プライム企業に「脱炭素リスク」開示義務
企業競争力の物差しが利益から炭素に変わる!

 企業の競争力を測る物差しが「利益」から「炭素」に変わる――。炭素をたれ流す非エコな企業は、ビジネスの参加資格すら得られない状況が現実のものとなりつつある。

 典型的なのが米アップルの方針だ。2030年までにサプライチェーンの100%において脱炭素を達成するとしていて、それに対応できないサプライヤーはアップルと取引できなくなる。

 目下のところ、日本企業に差し迫っている関門は、脱炭素リスクの開示だ。主要国の金融当局が中心となって設立された「気候関連財務情報開示タスクフォース(TCFD)」の提言に基づく気候変動リスクの情報開示が、順次義務付けられる方向で議論が進められている。

 来年4月には東京証券取引所が再編されるが、その“最上位”であるプライム市場の上場資格として、TCFDに準拠した情報開示が求められるようになる。

 炭素を減らす取り組み、ビジネスモデルのチェンジ、脱炭素リスクの情報開示に伴う事務的コストの増加――。脱炭素が企業に大きな負荷を強いることになることは間違いない。

独自指標「脱炭素競争力」でランキング
低い企業は再編の憂き目に遭う

 そこでダイヤモンド編集部では、「脱炭素競争力」を独自指標に採用してランキキングを作成。ランキングの作成には、東海東京調査センターの杉浦誠司シニアアナリストの協力を得た。

 脱炭素競争力とは、キャッシュベース利益(EBITDA)をCO2排出量で割って指数化したものだ(いずれも2019年度の数字)。この指標は、事業活動において排出したCO2量に対してどれだけ効率的に稼ぐことができるかを測る物差しとなる。炭素排出量の多寡だけではなく利益の要素を入れることで、企業の「脱炭素活動」の耐久力を測ることができる。

 つまり、脱炭素競争力は同じ業種内での「脱炭素活動の効率性」や「将来の開発・設備投資余力」などを示しているとも言える。値が低い企業ほど、脱炭素に関わるコスト負担の耐久力が低いということだ。

 それでは脱炭素「脱落危険度」が高い会社ランキング【ワースト5社】を見ていこう。

【ランキングの作成方法と見方】
●対象
・9月28日終値ベースの時価総額で上位1000社の上場企業のうち、19年度のCO2(または温室効果ガス、GHG)の排出量を統合報告書で開示している企業。銀行、保険など金融業を除く
●作成方法
・独自指標として「脱炭素競争力」を採用し、ランキングを作成した。東海東京調査センターの杉浦誠司シニアアナリストが監修。脱炭素競争力=キャッシュベース利益(EBITDA)÷CO2排出量。単位は千円/t-CO2
・19年度にのCO2排出量(開示がない場合はGHG排出量)と財務データを収集。排出量は原則として、スコープ1(自社内の直接排出)、スコープ2(他社から供給された電気、熱、蒸気の使用に伴う間接排出)の数字を使用。統合報告書にスコープごとの排出量が開示されてない場合は、サプライチェーン排出量、総排出量などを採用した
・利益については、近年の会計基準の変更(日本基準、IFRSなど)に伴う比較困難に対応するために、営業利益ではなくEBITDA(いわゆるキャッシュベースの利益)を採用。計算式は営業利益(または事業利益)+減価償却費

ワースト1位J-POWER、4位中国電力
石炭火力依存と原発未稼働があだに

 ワースト1位はJ-POWER。19年度のGHG排出量はスコープ1とスコープ2の合計で5345万t-CO2。「脱炭素競争力」は3.1(千円/t-CO2)と最下位となった。

  同じエネルギー業界では中国電力もワースト4位にランクイン。J-POWERと中国電力が下位に沈んだ理由は二つある。

 一つ目は、両者共に石炭火力発電に依存しているため、そもそも炭素排出量が多いこと。ランキング対象421社のうち、J-POWERは3番目に、中国電力は5番目に多い。

 二つ目は、稼働していない原子力発電所を抱えていること。J-POWERの大間原発(青森県)、中国電力の島根原発2号機などが未稼働で、発電時に二酸化炭素を排出しない原発に頼れないことがネックになっている。

 なお「ダイヤモンド・オンライン」の特集『脱炭素地獄』では、脱炭素のネガティブインパクトが大きい企業をまとめた独自ランキング完全版を配信中。『脱炭素「脱落危険度」が高い会社ランキング【ワースト421社完全版】7位日本製鉄、1位は?』で詳報している。

Graphic:Daddy’s Home, Data by Takahiro Takeda,Takayoshi Koumi

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