韓国で120万部のミリオンセラーとなった話題書がある。『どうかご自愛ください ~精神科医が教える「自尊感情」回復レッスン』だ。精神科医である著者が「自尊感情(≒自己肯定感)」の回復法を指南した一冊である。「些細な事を気にしすぎる」「パートナーとの喧嘩が絶えない」「すぐに人と比べて落ち込む」「やる気が出ない」「不安やゆううつ感に悩んでいる」「死にたいと考えてしまう」など、多くの悩みは自尊感情の低下が原因だと本書は伝えている。そして、その回復法を教えてくれる。本書の日本版が、今年7月に刊行となった。日本でも口コミで話題を集めている本書の一部を、今回は特別に紹介する。

宝くじの高額当選者が「うつ病」にかかってしまう驚きの理由Photo: Adobe Stock

宝くじの高額当選者が
大金と引き換えに失ってしまうもの

 宝くじの高額当選者やカジノで大金を手に入れた人の中には、うつ病にかかる人が少なくないという調査結果があります。大金を手にしたという事実は喜ばしいことですが、その幸せが自尊感情を高めることはなく、むしろ自尊感情を低下させることのほうが多いというのです。いったいなぜでしょうか?

 その理由は、自尊感情を評価する基準の中に「自分がどれだけ社会から必要とされているか」という項目が含まれているからです。大金を手にして仕事をやめたりすれば、その感覚をもてなくなってしまうのでしょう。

 自尊感情の維持には、「自分が必要とされている」という感覚が必要不可欠です。家庭という小さな社会から、地域、国家、ひいては世界まで、どんなコミュニティであってもそう感じられることが大切になります。成長期に親から褒められたくてたまらないとか、選挙で投票しただけでも満足感が得られるのは、そういった理由からです。

(本原稿は、ユン・ホンギュン著、岡崎暢子訳『どうかご自愛ください』からの抜粋です)

ユン・ホンギュン
自尊感情専門家、ユン・ホンギュン精神健康医学科医院院長
中央大学校医科大学を卒業し、同大学医科大学院で博士課程を修了。京郷新聞、韓国日報、月刊生老病死などへの寄稿のほか、FMラジオ交通放送「耳で聞く処方箋」などの相談医としても活躍。韓国依存精神医学会、韓国賭博問題管理センター、中央大学ゲーム過没入センター、性依存心理治療協会、校内暴力防止のための100人の精神科医師会などで活動。主に関心を寄せている分野は「自尊感情」と「依存」。初の著書『どうかご自愛ください ~精神科医が教える「自尊感情」回復レッスン』が韓国で120万部のミリオンセラーに。