「茶畑」の地図記号はなぜ「丸い点が3つ」なのか?「茶畑」の地図記号はなぜ「丸い点が3つ」なのか? Photo:PIXTA

JR東日本に入社後、『ecute』プロジェクトを立ち上げ、「エキナカ」の文化を定着させた鎌田由美子氏。サーキュラーエコノミー(循環型経済)の観点から地域の1次産業を見つめる鎌田氏が、現代人のライフスタイルにおいて大きなポテンシャルを感じているのが「地域の1次産業✕サスティナブルなものづくり」です。鎌田氏が今、もっとも注目しているひとつが「お茶の実」です。このお茶の実、実は近年、異業種、とくにコスメ業界からの人気が急上昇しており、年々減少するお茶農家のあらたな収益化の可能性として、期待が高まっているのです。

お茶の消費量は15年間で7割へ減少
消えゆく茶畑の風景

鎌田由美子氏鎌田由美子(かまだ・ゆみこ)
ONE・GLOCAL代表。1989年、JR東日本入社。2001年、「エキナカビジネス」を手がけ、「ecute」を運営するJR東日本ステーションリテイリング代表取締役社長に就任。その後、JR東日本の本社事業創造本部で「地域再発見プロジェクトチーム」を立ち上げ、地産品の販路拡大や農産品の加工に取り組む。2015年、カルビー上級執行役員就任。2019年、ONE・GLOCALをスタート。近著に『「よそもの」が日本を変える』(日経BP) Photo by Teppei Hori

 学校で使用していた地図帳の地図記号をおぼえていますか?

 国土地理院で決められる地図記号はさまざまなものがあり、学校や工場、郵便局、温泉、神社といった地図記号がパッと頭に思い浮かぶ人も多いかもしれません。

 では、「茶畑」の地図記号は――?

 答えは「丸い点が3つ」の記号です。なぜこのような記号になったのでしょう。

 日本人になじみのあるお茶は、奈良・平安時代に遣唐使や留学僧によってもたらされたといわれています。

 その後、安土桃山時代に千利休が「茶の湯」を完成させ、江戸時代には製法や流通が発達。国内に普及しただけでなく、海外へも輸出されるようになりました。お茶の産地は沖縄から東北までと広く、ワインと同じようにテロワール(自然環境)が味を大きく左右します。

 そのようなお茶ですが、マーケットは厳しい状態が続いています。

 農林水産省の資料によれば、平成17年から15年間で、1世帯あたりのリーフ茶(茶葉からいれる緑茶)の消費量と生産量は共に7割へ減少。お茶の産地の作付け面積も8割へと減少しています。

データ農林水産省「茶をめぐる情勢」(令和3年8月)より
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 農家の高齢化は他の産業と同じですが、全国の茶園の約4割が中山間地に位置するため、機械の導入は困難といわれています。お茶の産地で有名な静岡では、中山間地の5割が傾斜度15度以上です。お茶の消費量が減少し続け、生産量や買い取り価格が低下すれば、さらにお茶農家は減少していくでしょう。

「夏も近づく八十八夜、野にも山にも若葉が茂る…』で始まる、初夏の茶摘みの光景を歌った唱歌がありますが、このような茶畑の風景も失われていくことになります。