東京都板橋区のイトーヨーカドー店舗が、家主の意向に反して立ち退きを拒否し、提訴された。勝ち組業種の攻勢に繰り出した異例の手法とは。(ダイヤモンド編集部 岡田 悟)
老朽化による建て替え案
コンペにはヨーカ堂も応募
イトーヨーカドー上板橋店の土地と建物を所有する地元の不動産会社、小宮恒産の村上喜代次会長は10年前、イトーヨーカ堂創業者であるセブン&アイ・ホールディングス(HD)の伊藤雅俊名誉会長と店の前で写真を撮ったときのことが忘れられない。
伊藤名誉会長は身長が自分より10センチメートル程度高いが、写真を見ると、2人の頭の高さは同じ。そうなるように体を曲げた、伊藤名誉会長の気遣いだった。
東京都板橋区にある4階建ての建物にこのヨーカドーが開業したのは1971年。他のスーパーの入居が決まりかけていたところ、伊藤名誉会長が先代社長の元を足しげく訪れて入居を頼み込んだ。
ヨーカ堂のような総合スーパー(GMS)は隆盛を誇ったが、その後凋落。この店も例外ではない。村上会長によると、90年代半ばに年間90億円を超えた売上高は今、40億円程度。家賃は度重なる減額を経て、ピーク時の4割程度だ。
古くなった建物は漏水やコンクリートの剥離が生じ、小宮恒産側が多額の改修費を負担してきた。そのため2016年の契約が満期となる今年12月の時点で「更新はしない」と、20年2月にヨーカ堂側に伝えた。同4月にコンペを実施し、ヨーカ堂以外からも建て替え案を募った。ヨーカ堂も提案したが、条件に合わず落選した。