24時間営業を巡る加盟店との対立、セブンペイ、無断発注……。コンビニ業界の王者セブン-イレブン・ジャパンの問題は、単なる“不祥事”の連続ではない。ビジネスモデルの根本的な見直しが求められているのだが、手をこまねいているだけの現経営陣は、さながら“麻痺”状態だ。現場の社員は自爆営業や加盟店へのノルマ達成の要求など今なお暴走を続けており、セブンの劣化に歯止めがかからない状況に陥っている。特集『コンビニ搾取の連鎖』(全12回)の#4では、そんな業界最大手の中枢と末端の異常さを浮き彫りにする。(ダイヤモンド編集部 岡田 悟)
加盟店オーナーに手渡した「おでん」と「ナナコカード」
“自爆営業”が今なお続く社員のプレッシャー
2019年秋、東日本のあるセブン-イレブンの店舗で、「OFC」と呼ばれる経営指導員が、店のオーナーに“意外な”依頼を持ち掛けた。
OFCが手渡してきたのは、おでんの具材と電子マネー「ナナコカード」、そして日付と共に「こんにゃく」「大根」「しらたき」などと書かれた表だ。商品の合計額は約3万円。ナナコカードはOFC個人のものであるらしい。OFCはこう懇願した。「自然に売れたと見えるように、この順番でレジに打ち込んでください」──。
コンビニの仕入れの権限は、表向きは加盟店オーナーにある。消費期限が短く、衛生管理の負担も大きいおでんは、ここ最近は取り扱いをやめる店が増えている。このオーナーも店頭でのおでんの販売をやめていたため、渡された具材は従業員らと分け合って自宅で食べた。
おでんの10%オフセールや、おせち料理などのキャンペーンで、大量に売れ残りが出る食品ロスが問題視され始めている。本部は対外的には「ノルマはない」「発注の権限はオーナーにある」との“公式見解”を発信してきた。
だがコンビニ会計では、売れ残った食品の廃棄額の大半が加盟店のコストになる。このため、少しでも販売機会を増やしたい本部が自ら在庫リスクをほとんど負わず、加盟店に食品を大量に仕入れさせる手法が批判を浴びている。そして地域によっては今なお、本部の営業責任者の意向次第で、加盟店に厳しい仕入れノルマが課される状況が続いているようだ。
このOFCは、他のキャンペーンでも同様の“自爆営業”をすることがままあった。18年末には、高級おせち料理のセットを2~3個自ら予約。「売れなかったら私が買い取りますので……」と、真っ青な顔で語っていたという。おでんの具材を持ってきた際に心配になったオーナーが、「やめた方がいいんじゃないの?」と声を掛けたが、OFCは「すみません、(上司から)『数字を作れ』と言われているんです」と力なく笑っていた。
本部のノルマは、現場社員による加盟店での無断発注の温床にもなっているが、気の弱いOFCは上司にも加盟店オーナーにも逆らえず、自腹を切って達成することになる。