業務スーパー#1
写真提供:神戸物産

兵庫県加古川市の小さなスーパーから始まり、今や全国に900店舗を展開する一大チェーンとなった「業務スーパー」。運営する神戸物産は、2020年10月期決算において8期連続で最高益を更新した。特集『「業務スーパー」の非常識経営』(全7回)の#1では、地方の業務用スーパーがなぜここまで成長できたのか、躍進の秘密を追った。(ダイヤモンド編集部 相馬留美)

「業務スーパー」悲願の“全国制覇”へ
2月25日に、空白県の宮崎に初出店

「業務スーパー」の“全国制覇”が目前に迫っている。既に46都道府県に出店しており、2月25日に唯一の空白県だった宮崎県に悲願の初出店を果たす。

 ここで言う業務スーパーとは、業務用食材が置かれたスーパー全般の意味ではない。緑の看板が目印の、神戸物産が運営する食品スーパーの店名である。業務用をうたい文句に大容量の製品を並べているものの、買い物客の大半は一般人だ。

 業務スーパーが急成長したことで、兵庫県稲美町の神戸物産本社でここ数年、定期的に議論になる話題は“キリ番”だ。

 1月28日、山口県下関市に「業務スーパー吉見店」がオープン。これで業務スーパーの店舗数は900店に達した。

 実は1週前に、首都圏で2店舗が同日にオープンしていた。キリ番の対象となった店は、報道発表やメディアの取材などで露出が増えるメリットがある。同日オープンならば、「うちの店をキリ番に」と現場が願うのも無理はない。

「毎月3店舗くらい新規出店がある。888店を達成した昨年の11月末には3店舗同時開店だったので、『888店目はどれだ』と議論になった」と神戸物産の古株社員は苦笑する。

 2000年3月の1号店オープンから約20年間で900店まで拡大した業務スーパー。競合の大手食品スーパーでも、年に数店舗という出店ペースの企業も少なくないことと比べると、その膨張ぶりは際立っている。

 業務スーパーの躍進で神戸物産の株価もうなぎ上りだ。20年12月には1株当たり3710円に達した。株価が低迷していた08年10月の26.6円(株式分割調整後の数値)と比較すると、 139倍という驚異的な成長率をたたき出している。

 近年の株価急騰の一因は、プライベートブランド(PB)商品「冷凍インスタントタピオカ」の大ヒット。これで“タピオカ銘柄”として一気に注目を集めた。

 ただし、好調な業績も株価の裏付けになっている。神戸物産の20年10月期の売上高は3409億円、営業利益は239億円と8期連続の増収増益となった。新型コロナウイルス感染拡大による巣ごもり消費の影響に加え、PB商品のヒットにより、新規顧客が増え続けているからだ。

 神戸物産の創業者である沼田昭二氏は1981年、兵庫県加古川市で食品スーパー「フレッシュ石守」を開業した。

 昭二氏は元料理人という異色の経歴。メインメニューに添える漬物や総菜などが業務用としてあったら便利だろうという発想で商品作りを手掛けるようになったという。

 そして2000年3月、兵庫県三木市の片田舎で業務スーパーの1号店が誕生した。昭二氏が知人に頼んでフランチャイズ(FC)オーナーになってもらったのだという。

2000年3月に兵庫県の片田舎で誕生した「業務スーパー」1号店
2000年3月に兵庫県の片田舎で誕生した「業務スーパー」1号店 写真提供:神戸物産

「業務スーパー1号店はひどい場所にあったんですよ。まさに“ポツンと業務スーパー”でした」と、創業者の息子で神戸物産社長の沼田博和氏は苦笑する。

 創業者がFC方式で業務スーパーの出店を始めたのには理由があった。