岸田首相の肝いり政策
「経済安全保障」の中身とは?

 経済安全保障とは、国の基幹産業や重要インフラを支える技術や人材などを脅威から守るという概念だ。「バラマキ批判」が伴う上、具体的な政策として成果を出しづらい「分配」政策と比べ、自民党内をまとめやすい分野といえる。

 安倍晋三政権時代に自民党政調会長を務めていた岸田氏が政調会に「新国際秩序創造戦略本部」(後に「経済安全保障対策本部」に名称変更)を創設し、一気に認知度が高まった。

 経済安保分野に精通する甘利明・党幹事長を座長に、2020年12月に「提言」、今年5月には「中間とりまとめ」を公表。その中で経済安保を「我が国の独立と生存及び繁栄を経済面から確保すること」と定義している。中国の通信機器大手ファーウェイ(華為技術)などを巡る米中の技術覇権争いや国際経済構造の急激な変化をにらみ、国益が損なわれるとの危機感を募らせてきたのだ。

 岸田首相は先の総裁選で、戦略技術・物資の特定と技術流出の防止に向けた「経済安全保障推進法」(仮称)の策定や、「DFFT(自由で信頼あるデータ流通)」の推進などを公約。新内閣発足で経済安保を担当する閣僚ポストを新設した。

 10月8日の所信表明演説では、「新たに設けた担当大臣の下、戦略物資の確保や技術流出の防止に向けた取り組みを進め、自律的な経済構造を実現します。強靱なサプライチェーンを構築し、わが国の経済安全保障を推進するための法案を策定します」と表明。自民党の衆議院選挙の公約にも推進法の策定を盛り込んでいる。

 筆者が独自に入手した経済対策の原案には、首相が掲げる「新しい資本主義」の柱として、「経済安全保障の抜本的強化」を明記。自律的な経済構造の実現に向けて必要な基盤整備を行うとし、先端半導体や医薬品、蓄電池の国内生産拠点の整備を支援し、サプライチェーンの国内回帰を促進するという。

 量子技術や人工知能(AI)といった先端技術や戦略物資、人材の海外流出防止に加え、有事における必要な物資の国内調達もポイントだ。