小室夫妻の結婚会見の異常
親や家族への感謝の言葉はなく…

 黒田清子さんの結婚会見などもそうだったが、普通はここに至るまで支えてくれた周囲の人間や、育ててくれた親への感謝から始まり、新しい人生を踏み出す決意、さらには未来への希望などといった話がメインとなる。結婚前日や当日をご両親とどう過ごしたか、どのような温かい言葉で送り出されたのか、などのエピソードを語ることも多い。

 しかし今回、小室夫妻はそれぞれの親や家族への感謝の言葉はなく、家族とどのように過ごしたかなどについても触れていない。その代わりに「トランプ話法」を駆使して、フェイクニュースの被害者だったと主張している。

 断っておくが、そのような小室夫妻の会見スタイルを批判しているわけではない。危機管理を生業とする者の1人として、「新しいやり方だな」と素直に感心しているのだ。

 今回の結婚会見は確かに評判があまりよろしくない。が、一方で、小室夫妻が批判的な論調だったメディアを、明確に「フェイクニュース」と断罪したことで、一連の報道に対して批判的な人々から応援の声も上がっている。

 一方的なマスコミやネットの誹謗中傷に屈することなく、愛を貫いたお二人を賞賛する声もある。また有識者の中には、行き過ぎたマスコミの皇室バッシングのあり方を考えるべきだという意見や、「皇室の人権」を議論すべきだという意見も増えている。

 元皇室の方にとっては異例ともいえる攻撃的な「トランプ話法」によって、確かに「敵」も増えた。が、「敵」を明確にしたことで、「味方」もそれなりに確保することができたのだ。あのようなスタイルの会見は、従来の危機管理のセオリーとしては「失敗」だが、小室夫妻としてはそれなりに満足のいく内容だったのかもしれない。

「日本のトランプ」が登場する
土壌は既に出来上がっている

 これからの時代はこのような戦い方が増えていくのかとも思う。今、週刊誌やインターネットの記事に対して芸能人が「デタラメばかり」と批判する動きが活発化している。また、マスコミ各社の論調が、政権に対するスタンスでレイヤーが生じる、いわゆる「偏向報道」の問題もかねて指摘されており、ネットでは「マスゴミ」という表現もよく聞かれる。

 つまり、「トランプ話法」が成立する土壌は既に出来上がっているのだ。自分に批判的なニュースを取り上げて「フェイクニュースだ」と騒いで、「本当のことを言っているからマスゴミがつぶしにかかっているのだ」という陰謀論を唱えて、熱烈な信者を獲得する――。そんな「日本のトランプ」がいつ登場してもおかしくないのだ。