最側近の旧大蔵省OB議員は武蔵出身
乗っかる財務省は超エース級を官邸へ

 米国では共和党系、民主党系の民間の政策シンクタンクが多額の寄付金で運営されている。一方、寄付文化のない日本では霞が関が唯一のシンクタンクと言っていい。政治家にとって、霞が関官僚とのパイプは強ければ強いほどいい。

 それは、官僚にとっての政治家とのパイプも同じこと。首相秘書官や官房副長官補などのポストで権勢を振るう「官邸官僚」という言葉が生まれ、彼らの力が増幅するのを見てきた官僚たちにとって、自分と縁のある政治家の出世は、自らの出世に直結する。

 また、岸田政権のふたを開けてみると、開成に加え、武蔵出身者が中心になって支えるという不思議な構図になっている。そして、開成と武蔵OBが手を携える構図に全力で乗っかり、官邸での主導権を強めようとしているのが財務省だ。

 岸田首相の最側近で、総裁選の際は陣営の選対事務局長として現場を支えた木原誠二前衆議院議員(武蔵、旧大蔵)は、官房副長官に就任。経済安全保障担当大臣には、当選3回の小林鷹之前衆議院議員(開成、旧大蔵)がそれぞれ抜擢されている。

 この動きに乗っかれとばかりに、財務省は、最強の布陣をひいている。財務省内で最大派閥と呼ばれる「財務省厚労族」(厚生労働省を担当する主計官ら)は官邸に、エースの宇波弘貴前主計局次長を送り込んだ。宇波局次長と、本省官房長の新川浩嗣元首相秘書官とのコンビは絶妙とされている。2人とも開成や武蔵出身ではないが、超エース級を投入して旧大蔵省出身の首相側近とのパイプ作りに勤しんでいる。

 なお「バラマキ批判」を展開して、高市早苗自民党政調会長の怒りを買った事務次官の矢野康治氏だが、メディアからの論評は好意的なものが目立つ。岸田首相と同じ広島出身であるだけでなく、同じように一族に被爆者がいることも大きく作用するかもしれない。

 矢野事務次官はまた、省内の開成OBを配置して、「財政健全化」を旗印に、現場に至るまで絶妙な人事を行っている。