人生100年時代は、健康こそ最大の資産です。
しかし40歳を越えると、がん、糖尿病、腎臓病といった病気を避けては通れません。国立がん研究センターによれば、40~49歳のがん患者数は、30~39歳と比べると3倍以上です(2018年)。もちろん50代、60代と年齢を重ねるにつれ、がん患者数はどんどん増えていきます。
本連載は、毎日の食事から、大病を患ったあとのリハビリまで、病気の「予防」「早期発見」「再発予防」を学ぶものです。著者は、産業医×内科医の森勇磨氏。「予防医学ch/医師監修」の管理人でもあり、動画は「わかりやすい説明で参考になる」「怖いけど面白い」と評判で、チャンネル登録者は27万人を超えています。初の単著『40歳からの予防医学 医者が教える「病気にならない知識と習慣74」』を出版し(9月29日発売)、がん、糖尿病、高血圧、食事、生活習慣、人間ドック、メンタルというさまざまな観点から、病気にならない知識と習慣をあますところなく伝えています。
座りすぎると早死にします
新型コロナウイルス蔓延の影響で「テレワーク」「在宅勤務」といった働き方が当たり前のものとして受け入れられるようになりました。実は、あまり喜ばしくない未来を示唆する研究データが既に半世紀も前に出ているのです。
1950年代、ロンドンでは2階建ての「ルートマスターバス」という赤いバスが誕生しました。当時は自動券売機などないので、バスを運転する運転手さんの他に、車掌さんが1人で切符を切る作業をせわしなく行っていました。
その光景を見たモーリス博士という研究者は、当時のイギリスで死亡者の最も多かった病気である心筋梗塞について、「2階建てのバスの中をあくせく往復していた車掌と、ずっと座っている運転手とではどちらが多いのか?」を研究し始めたのです。
その結果、なんと車掌より座りっぱなしの運転手のほうが心筋梗塞になる割合が高かったのです(※1)
この研究をきっかけに「座りすぎはもしかすると体によくないのではないか」という仮説のもと、世界各地でさまざまな論文が発表されました。
日常的に運動をしないで座っている時間が8時間以上の人は死亡率が約60%上昇したという論文があります(※2)
また、座っていたり寝転んだりする時間にほぼ比例して死亡リスクが上がったという論文も存在します(※3)。
世界的にも「座りっぱなしは寿命が縮まる」という結論になっています。