大きすぎるデメリットとは?

 偽陽性とは「本当は陽性でないのに検査結果で陽性と出てしまう」ことです。

 頸動脈エコーの話でいえば「本当は手術が必要なほど血管が狭くないのに、手術が必要なレベルと判定されてしまう」わけです。そして頸動脈エコーの検査はこの偽陽性の確率がかなり高く、偽陽性率が36.5%だったというデータも存在します(※2)

 こういったメリットとデメリットを比較した結果、グレードDという判断をアメリカ予防医学専門委員会(USPSTF)は出しているのです。

 ネガティブな印象を受けるかもしれませんが、日本とアメリカの脳ドックの現状や、メリット・デメリットを理解したうえで受けるのには異論はありません。

 家族に脳動脈瘤の人がいる方や、高血圧や糖尿病の方の「心配だから受けておく」という選択も否定しません。

 頸動脈エコーの偽陽性の話を知っていれば、もし首の血管の手術の話が出ても医師と話し合って手術を受けるか、様子を見るか決めるという選択肢も出てくるはずです。

 ただ残念ながら事前説明を省略し、万人にメリットの押し売りだけをする不親切なクリニックもあるのが現状です。

 1つはっきり言えるのは、遺伝の要素がない人、また生活習慣病がない人にとって、脳ドックは「コストパフォーマンス」のかなり悪い検査だということです。身近な人にぜひ教えてあげてください。

【出典】
※1 Michael L LeFevre,et al. Screening for asymptomatic carotid artery stenosis: U.S. Preventive Services Task Force recommendation statement. Ann Intern Med. 2014 Sep2;161(5):356 62.

※2 Anthony P Carnicelli,et al.Predictive multivariate regression to increase the specificity of carotid duplex ultrasound for high grade stenosis in asymptomatic patients.Ann Vasc Surg. 2014 Aug;28(6):1548 55.