原理・原則を重視する「武蔵」のサイエンス教育の凄み(1)大学と高中を分ける濯(すすぎ)川に面して建てられた理科・特別教室棟 (2)森の雰囲気を出しながら、掲示物を張り付けやすくする工夫も (3)図書館棟、西棟、理科・特別教室棟を南北に真っすぐ貫く廊下
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新校舎の中にもさまざまな仕掛けが

――エントランスの左側にヤギ小屋がありますね。

島崎 元々は「豊作会」という団体がニワトリを飼っていたのですが、2009年に鳥インフルエンザがありまして、10年前からヤギに変わりました。工事中に移った仮設の小屋が少し盛り上がった斜面にあり、引っ越しでパニックになったのか、ヤギが柵を乗り越えてキャンパス内を歩き回るようになりまして……。

――それは大変でしたね。

島崎 いまの小屋の柵も越えようと思えば越えられますが、環境に満足して、おとなしくしてくれています。やぎ係の生徒が一日も欠かさず面倒を見てくれています。

――普通教室は南北に向き合っていますが、グラウンドに面した図書館から西棟を通って新校舎まで一直線の廊下になっていますね。

島崎 西棟の非常階段が結構大きくて、当初案では廊下が折れ曲がっていました。設計を見直して真っすぐにすることで、この廊下を利用した光の実験もできるようになりました。

――1階には保健室や芸術教室、視聴覚教室がありますね。

島崎 講演会や保護者会などで利用する視聴覚教室には1つの学年が収まります。濯川が目線に来るよう半地下にしてあるのですが、カーテンを閉めて利用することが多くて。

――せっかくの風景をなかなか目にできない(笑)。2階には英語科と数学科の研究室がありますね。

島崎 教員は教科ごとに分かれて研究室にいます。事務室の隣には、教員間のコミュニケーションを取るためのラウンジのような教師控室もあります。2階には新たに調理室も設けました。また、文化系の部室も12室あります。鉄道研究部はご覧の通り、ジオラマ作成のスペースがないので、階下の芸術教室と毎回往復してもらっています。

――3階には物理と地学、4階には化学と生物の講義室・実験室と準備室がありますね。

島崎 理科・特別教室棟には、実験もできる3つの講義室と5つの実験室があります。4階に化学実験室を設けたことで、OBから「空気よりも重い有毒ガスが漏れたらどうする」とお叱りを受けまして、5分ですべて排気可能な空調を壁に設けたりもしています。

――いろいろご苦労が絶えませんでしたね。では、物理の準備室にお邪魔しましょう。

原理・原則を重視する「武蔵」のサイエンス教育の凄み(1)旧校舎を取り壊した後、新たに設けたエントランス。突き抜けて生えているケヤキがシンボル (2)エントランス脇で毎朝生徒を笑顔で迎えるヤギ (3)年中無休で活動するやぎ係 (4)普通教室のある南棟と北棟の間、かつてはレンガが敷き詰められた“赤の広場”跡で練習するジャグリング部の生徒 (5)ヘッドマークも自作、ジオラマ作りは階下の芸術教室で行う鉄道研究部
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