ONE JAPAN(ワン・ジャパン)という団体を知っているだろうか。転職や起業など、意欲ある者ならいまや「道」はいくらでもあるにもかかわらず、大企業の中から変革を起こそうという若手中堅、55社3000人が集う実践コミュニティだ。
結成から5年、今やその活動は入山章栄氏や篠田真貴子氏、中原淳氏をはじめ各界のオピニオンリーダーが後押しし、実際に「HRアワード2017」特別賞、「内閣府主催 第1回日本オープンイノベーション大賞 経団連会長賞」を受賞するまでに至っている。
この度上梓された『なぜウチの会社は変われないんだ!と悩んだら読む 大企業ハック大全』では、ONE JAPANが培ってきた「大企業の力を使って、イノベーションを本気で社会に実装する」ための実践知の集大成だ。同書の「はじめに」より、トヨタ自動車、パナソニックなど日本を代表するような大企業に属しながら「中から変えていくこと」を選んだ若手中堅のアツい想いをご紹介しよう。
大企業を「中から変える」ことは、本当に可能なのか?
このたび上梓した『大企業ハック大全』は、パナソニックやトヨタ自動車など、日本を代表する大企業55社に勤める若手中堅社員3000人が集う実践コミュニティ「ONE JAPAN」が、結成から5年、大企業を中から変えようと奮闘し、実践する中で培ってきた「スキル」「技」「ノウハウ」を網羅し、1冊にまとめたものです。
そのように言うと、次のような疑問や違和感を持つ方も多いかもしれません。
「大企業の若手中堅のノウハウなんて、何の役に立つの?」
「世界で存在感を失った日本企業に踏みとどまって実践することに、一体何の意味がある?」
「イノベーションを起こしたいんなら、近道はベンチャーか外資に行くことでしょ?」
確かに、日本の大企業を取り巻く環境は、決して楽観的に捉えられるものではありません。もしあなたが大企業に所属していたなら、いや、もしそうではなくても、次のような声(ボヤキ)に、聞き覚えがあると思います。
「ウチの会社、上がOKしないと進まないから」
「また責任のなすりつけあいしてるよ」
「なんでこんなに遅いんだ」
「いつになったら自分の番がくるの?」
「挑戦しろって言うくせに、新しい提案は否定される……」
実際、ONE JAPANに参加している企業の若手中堅からも、こうした話は、「なぜウチの会社は変われないんだ!」というもどかしさとともに、よく耳に入ってきます。
そこで2020年、私たちはONE JAPANとして毎年実施している意識調査で「大企業病」について聞きました。加盟団体1600人への調査の結果、大企業病として次の5つがあぶり出されました。
1 内向き・社内至上主義:「ウチの会社、上がOKしないと進まないから」
2 縦割り・セクショナリズム:「また責任のなすりつけあいしてるよ」
3 スピード欠如:「なんでこんなに遅いんだ」
4 同質化・新陳代謝不全:「いつになったら自分の番がくるの?」
5 挑戦・仮説検証不足:「挑戦しろって言うくせに、新しい提案は否定される……」
詳細は本書にて説明しますが、大企業を中から変えようとしている私たちですら、こうした現実の前に立ち尽くすことが今もあります。
「どうせ大企業なんて……」と言われても、完璧に反論することはできません。
しかし、です。それでも、私たちは、こう断言します。
大企業を中から変えることはできる。そして「失われた30年」の間に大企業が忘れてしまった「挑戦」の文化を、もう一度取り戻すことができる、と。
そして、大企業が変われば、日本は変わる、と。
結成から5年、ONE JAPANは何を成し遂げたのか
なぜ、そこまで言い切れるのか。
それは、ONE JAPANがこの5年の歩みで得た、確かな手応えがあるからです。1つは、大企業に眠る有形無形の資産を改めて認識したことです。
多種多様な人の力。
世界に先駆けて開発された技術。
いざ事を動かす際に発揮される組織力。
ONE JAPANとして活動する中で次々と見出された、各社の「人」「もの」「技術」「歴史」は、どれを取っても「これを活かすことができれば、ものすごいインパクトをもたらせる!」と確信できるものばかり。
そうした資産を再定義し、事業とすり合わせていくことは、新型コロナウイルスの世界的な感染拡大でさらに不確実性を増す世界で、イノベーションを起こすための大きな武器になると考えています。
もう1つは、私たち自身が、大企業が持つ資産を「横」でつなぐことで実際にインパクトをもたらすことができるようになってきたことです。
たとえば、2020年から始め、現在第2期が開催中の大企業挑戦者育成プログラム「CHANGE(チェンジ)」。このプログラムは、「本気で自社と社会を変えていく人」を生み出すために、大企業の中からイノベーションを生み出すマインドセットやスキル、さらには社内政治の方法論までを学ぶラーニングコミュニティです。
2020年の第1期は、80人を超える各界のトップランナーをメンターとして迎え、熱のこもったフィードバックをいただき、3か月を完走。最後は、2020年のカンファレンスで5人のファイナリストによるピッチイベントを開きました。
結果、このプログラムから生まれたアイデアが、早くも事業化するなど、新しい風を巻き起こしはじめています。
他にも、「ハッカソン」を開催し、挑戦の場を作ってオープンイノベーションの流れをいち早く押さえたり)、「働き方意識調査」を通して政策提言してきたことで、世の中に少しずつ私たちの「声」が届くようになってきました。
また、ONE JAPANを通して、「大企業の中にも面白い人がいる」とベンチャーとの連携が進んだり、「こんな面白い動きができるなら、大企業はむしろ『あり』では」と新卒や中途の採用につながったりといったことが、各社で起こっているのです。
そんなONE JAPANを、早稲田大学ビジネススクール教授の入山章栄さんをはじめ、多くのオピニオンリーダーが応援してくださっています。さらに2019年には、内閣府主催の「第1回日本オープンイノベーション大賞 経団連会長賞」をいただくこともできました。
そして今、ONE JAPANでは、こうして芽吹きはじめた挑戦の文化を、大企業の内外でより強力に推進すべく、さらなる活動に取り組んでいます。
私たちのコミュニティから生まれた「イントラプレナー(社内起業家)」が大企業の中で使っているスキルやノウハウを、社会に伝えるという活動です。本書もその活動の1つに他なりません。
蓄積してきたのは、変われない大企業の中で
「やりたいこと」を実現するための技
「何か新しいことを、企業の中で挑戦したい」
そう切り出すと、ことあるごとに、「辞めて挑戦できる場に移ればいいじゃない」と言われます。まるで最初から、大企業の中にはそんな選択肢がないかのように。
しかし、ONE JAPANには、大企業を「辞める」でもなく、大企業に「染まる」でもなく、大企業に残って、自らがやりたいこと、社会に対して果たすべきことに粘り強く取り組んでいる若手中堅がたくさん集まっています。
たとえば、本書で「技」「ノウハウ」を披露してくれている人には、こんな人がいます。
● 新規事業のアイデアをいくら出しても「ありがとう」で終わってしまって実現しない
● 超縦割りの大企業で営業職
● 新規事業の経験値もベンチャーの土地勘もほぼゼロ
人も、ものも、予算も、時間もない。そんな状態でももがきつづけた結果、次のような成果をあげています。
● 新規事業のアイデアをいくら出しても「ありがとう」で終わってしまって実現しない
→新規事業がどんどん生まれる社内アクセラレーションの仕組みを構築
● 超縦割りの大企業で営業職
→他社と共創し、ファッション分野のサブスクリプションビジネスをローンチ
● 新規事業の経験値もベンチャーの土地勘もほぼゼロ
→シンガポールでバイオテックベンチャーと協業
ここで挙げたのは、ONE JAPANの中で特別すごい人というわけではありません。イノベーションを志したきっかけや思いもさまざまで、必ずしも最初からすべてがうまくいったわけでもありません。
しかし共通しているのは、みなが「どうせ変えられない」と決めつけてしまうような状況でも諦めず、実際に変化を起こしてきたということです。大企業の中にあって、その論理や空気に屈することなく。
経験も人脈もゼロからスタートして、大企業の中でやりたいことを実現してきた彼ら彼女らのノウハウや努力には、新型コロナウイルスの感染拡大などが続く厳しい環境下でも新しいことに挑み、より大きなスケールで成し遂げるためのヒントが詰まっています。本書では、そんなONE JAPANメンバーから厳選された34人が培ってきた、本質的で、かつ実践的な44の「技」を網羅しています。
明日の「仲間」へ贈る言葉
もし、本書を手にしたあなたが、大企業でモヤモヤしている社員であったなら、この本を読んで今一度、「辞めるか」「染まるか」「変えるか」を考え直し、今いる会社にとどまってほしいと願います。
もし、本書を手にしたあなたが、大企業の管理職や経営者なら、ミレニアル世代の若手中堅社員たちの現場での挑戦を、応援し、鼓舞し、事業に活かしていってほしいと願います。
もし、本書を手にしたあなたが、学生であったなら、大企業を「変える」ために動く、先輩たちの地道な努力が詰まったこの本を読んで、ぜひ変える仲間になってほしいと願います。
もし、本書を手にしたあなたが、ベンチャー企業や中小企業の経営者や社員であったなら、この本を読んで大企業を動かす論理を知って、ぜひ外から大企業を最大限に活用してほしいと願います。
先が読めない時代の中でも、最善の選択を行い、実行に移していくには、どんな挑戦と実践を積み重ねればいいのか。「前例のない判断」を積み重ねてきたONE JAPANのメンバーが得た知見から、明日実行できる何かをぜひつかみとってください。
ともに「挑戦」の文化を築いていく「仲間」に、この本を贈ります。