採用面接では「自己肯定感」と「自己効力感」のどちらに注目するべきか?イラスト:ソノダナオミ

「自己肯定感」「自己効力感」という言葉をよく耳にするようになった。しかし、「肯定」も「効力」もその尺度が分かりづらく、「自己肯定感」や「自己効力感」が「高い」ことにどのような意味を見出すかは人それぞれのようだ。たとえば、新入社員の面接試験における「自己肯定感」の判断は? たとえば、企業・団体の人材育成における「自己効力感」の価値は? 教育再生実行会議における言葉の定義などから、いま改めて、「自己肯定感」と「自己効力感」について考えてみよう。(ダイヤモンド社 人材開発編集部)

そもそも、「自己肯定感」と「自己効力感」とは何か?

 自己肯定感・自己効力感・自己有用感といった「自己○○」という言葉が、ストレスチェックや適性検査などのビジネスシーンでも登場する。これらは、「自己をどのようにとらえるか」をさまざまな角度から判断し、表す概念だが、企業経営者や人事担当者はどう理解しているのだろうか。

 たとえば、教育改革を提言する「教育再生実行会議(内閣総理大臣の私的諮問機関)」では、「自己肯定感」を次のようにふたつの側面からとらえられるとしている*1

「勉強やスポーツ等を通じて他者と競い合うなど、自らの力の向上に向けて努力することで得られる達成感や他者からの評価等を通じて育まれる自己肯定感と、自らのアイデンティティに目を向け、自分の長所のみならず短所を含めた自分らしさや個性を冷静に受け止めることで身に付けられる自己肯定感」

 前者の「自らの力の向上に向けて努力することで得られる達成感や他者からの評価等を通じて育まれる」ものが「自己効力感」、後者の「自分の長所のみならず短所を含めた自分らしさや個性を冷静に受け止めることで身に付けられる」ものが「自己肯定感」を指す、と私自身は理解している。

 学術的な論考では、「自己肯定感」は、セルフエスティーム(自尊感情)の研究で知られるモーリス・ローゼンバーグ*2 の定義から、「自分のありのままを肯定的・好意的に認め、自分の価値を信じること」と解釈できる。対して、「自己効力感」は、カナダの心理学者であるアルバート・バンデューラ*3 が提唱した概念で、おおよそは、「(何かの)課題に対して実行できると感じること」と解釈できる。「自己有用感」も「自己効力感」と同様の概念と言っていいだろう。

「自己肯定感」が高ければ、いま現在のありのままの自分を肯定的に見ることができ、自分の苦手なことや得意なことを認識できる。

「自己効力感」が高ければ、過去の自分の体験から「自分ならできる」という意識を持ち、難しく思うことでも「やってみるか、様子を見ようか」と迷ったときに、「やってみる」方向に舵を切りやすい。

 たとえば、職場で上司から未経験の仕事を指示されたとき、過去の経験を糧に「大丈夫、できる!」と思うのが「自己効力感」の高い人の反応で、「自分の価値はできてもできなくても変わらない」と思うのが「自己肯定感」の高い人の反応である。

*1 教育再生実行会議 「自己肯定感を高め、自らの手で未来を切り拓く子供を育む教育の実現に向けた、学校、家庭、地域の教育力の向上(第十次提言)」より。
*2 Morris Rosenberg 1922年生まれ。アメリカの社会学者。
*3 Albert Bandura 1925年生まれ。社会的学習理論の提唱者としても知られる。