太田光治・千代田化工建設社長CEO兼CSOPhoto by Tohru Sasaki

プラントエンジニアリング大手で三菱商事の連結子会社である千代田化工建設は昨年、米国の大型液化天然ガス(LNG)プロジェクトでの共同企業体(JV)のパートナー企業の破綻によって赤字に追い込まれた。千代田化工は5月に公表した2027年度までの3カ年の中期経営計画で、海外の大型EPC(設計・調達・建設)への依存を減らす方針を掲げた。太田光治社長CEO兼CSOを直撃し、脱・EPCの考え方や今後の成長戦略を聞いた。米国では日米関税交渉で注目が集まったアラスカなどのLNGプロジェクトの建設ラッシュが迫っているが、太田氏は「大規模LNGの一括請負はもうやらない」と断言した。(聞き手/エネルギージャーナリスト 宗 敦司)

日米関税交渉で注目のアラスカLNG
千代田化工社長は「慎重に見ている」

――日米関税交渉でアラスカLNG(編集部注:北極圏のガス田から約1300キロメートルのパイプラインを建設し、年産2000万トンのLNGプラントを新設するプロジェクト。パナマ運河を通らずにアジアに輸送できるが、総投資額は440億ドル(約6兆6000億円)以上と見込まれる)が注目されています。

 大型LNGプロジェクトなので、周囲から千代田化工はやるだろうと期待されていることも承知していますが、結論から言うと慎重に見ています。ああいう大型のプロジェクトをランプサムターンキー(編集部注:一括請負契約。固定価格で設計・調達・建設・試運転まで請け負い、資機材高騰リスクなども引き受ける)契約でやるつもりはもうない。まだ採算もスケジュールも見えないので出資者の方も今のところは慎重でしょう。

 実は3月にダンリービー・アラスカ州知事が来日した際に「関心はあります」と伝えました。ただその意味は、10年くらい前からプレFEED(初期基本設計)をやってきたので、今後検討業務をやらせていただくことには関心があるということです。ただし、その先のEPC(設計・調達・建設)業務についてはFEED(基本設計)を踏まえた事業者サイドの検討結果次第で判断したいと考えています。

――米国では今年7件のLNG案件がFID(最終投資決定)となります。米湾岸地域だけで1年間にこれほどの案件がFIDになるのは過去に例がなくEPCリスクが高まるのではないでしょうか。現状手掛けていて、24年3月期の最終赤字の原因となった米テキサス州のゴールデンパスLNGの状況はどうですか。

次ページでは、米国でLNGプラントの建設ラッシュの様相を呈する中、太田氏がLNGプロジェクトへの関わり方について解説する。また、今後の成長戦略について、地域や案件のポートフォリオを具体的に示しながら明らかにする。これまでのEPCコントラクターという位置付けからの脱却に向けた道筋とは。