植物由来の代用肉の主力は大豆ミートだ。カップ麺のミンチ肉や肉まんの具などに使われてきたが、ここ数年、ビーガンブームにより利用範囲が広がりつつある。日本能率協会総合研究所の調査によると2019年に15億円だった大豆ミートの市場規模は2022年度に25億円、2025年度には40億円になるという。

大豆ミートの市場規模大豆ミートの市場規模(日本能率協会総合研究所) 拡大画像表示

 日本ではビーガンは根付かないと考えられていた。日本を含むアジア人は欧米人のように肉を食べない。「世界の食肉需要の動向と飼料用穀物」(三井物産戦略研究所)によれば、2012年の1人あたり牛肉消費量はアルゼンチンがトップで59.9キロ、アメリカが37.4キロ。対してEUが15.3キロ、日本は9.8キロ、中国はわずか4.1キロ。わざわざ代用肉を食べるまでもなく、最初から肉の消費量が少ないためだ。

 また大豆ミートは豆腐やみそ汁、しょうゆで暮らす日本人には珍しくも何ともない。国連食糧農業機関の『大豆の食品あるいは飼料としての国別消費量比較』(2007年)によれば、日本がカロリーベースで大豆食品を食べる量は世界一である。

大豆の食品あるいは飼料としての国別消費量比較『大豆の食品あるいは飼料としての国別消費量比較』(FAOSTAT 2007年) 拡大画像表示

 ちなみに欧米は統計が出ないほど食品としての消費量は少なく、大豆は牛豚の飼料や油の原料でしかない。数字を踏まえれば、日本は国全体がビーガンとはいわないまでも、ベジタリアンに近い食生活なのだ。

 しかしコロナ禍でテレワークが増え、飲食店の営業自粛が続いたことがビーガン市場を後押ししている。国民の健康志向が高まったためだ。

 巣ごもり需要で家での食事が増え、自分たちで栄養を考える機会が増えた。さらにコロナ対策として免疫力アップがキーワードとなり、食と健康を考える人が増えたのだ。

 日本政策金融公庫農林水産事業が行った消費者動向調査(令和3年1月調査)では食に関する志向で健康を上げる人の割合が前回調査より1.7ポイント上昇、低下傾向に歯止めがかかっている。毎年9月に実施される明治安田生命の「健康」に関するアンケート調査でも、約半数(45.1%)の人がステイホーム・コロナ禍を機に「健康への意識が高まった」と回答、「食事・栄養に気を配るようになった」(50.9%)と食事と健康への関心が高いことを示している。