【カラカス】資本主義の害悪としてギャンブルを禁止してきた社会主義政権下のベネズエラで、10軒以上のカジノが営業を始めた。わずか数年前にはからっぽだった商店の棚には現在、8000ドル(約91万円)の自転車から、チーズケーキファクトリーの冷凍デザートに至るまで各種輸入品がずらりと並んでいる。
ベネズエラ経済は過去7年間に80%縮小し、エコノミストらはその状況を、戦争状態の国以外では過去数十年間で最大の経済崩壊と評していた。しかし現在、ベネズエラ経済は底入れした可能性がある。経営コンサルタントやエコノミストらの予測によれば、2021年の国内総生産(GDP)は5~10%程度伸びるとみられており、そうなれば今年は、独裁色の強いニコラス・マドゥロ氏が2013年に大統領に就任して以来、初めて経済が成長した年になる。
硬直化した国家主導の経済モデルを捨てて、何でもありの資本主義に転換したことが、この回復の主因だ。マドゥロ氏は2019年から徐々にこの転換を進めてきた。反政府指導者やエコノミストを含む批判勢力は、多くのカジノの出現について、マネーロンダリング(資金洗浄)の需要が一因になっているとの見方を示している。ベネズエラでは、何十億ドルもの石油収入が、1990年代のロシアのようなオリガルヒ(政治と結び付いた新興財閥)を形成するための資金に流用されてきた。そのオリガルヒは今、経済自由化の流れをうまく利用している。