ボールを持つと、瞬く間に
相手を置き去りに

 日本のキックオフで始まる後半。仲間たちも三笘に搭載された武器を理解し、左タッチライン際にポジションを取った背番号「13」へすぐにボールを渡した。

 マークについた相手との間合いを保ちながら、縦へ加速して瞬く間に置き去りにする。慌ててカバーに来た別の選手を、さらにスピードを上げてまたもやかわす。

 最後はペナルティーエリアの左横、ゴールラインが見えたあたりで後方からのファウルで三笘のドリブル突破を止めるしかなかった。オマーンに衝撃を与え、プランを大きく狂わせたファーストプレーを、三笘は計算ずくだったと胸を張った。

「最初のプレーはけっこう大事で、流れを持ってきやすいところがある。前半を見ながら、サイドにはスペースがあるとチームとして共有できていたので」

 後半4分にも再び左サイドをドリブルで突破。相手を引きつけた上で一転してマイナス方向へパスを折り返し、遠藤航に始まるシュートの3連発を導いた。

 前半の日本の攻撃を電車に例えれば各駅停車だった。短いパスをすぐ近くの味方へ通すだけで、一人を飛ばすパスも、ましてやサイドを変える長いパスもなかった。

 単調な分だけオマーンも対処しやすい。ベトナム戦で決勝ゴールを挙げた、快足アタッカーの伊東純也を徹底マークすればいい。伊東自身も前半をこう振り返る。

「人数をかけて自分を止めに来ていたので、ちょっと難しくなった」

 しかし、後半になって日本が奏でる規則正しいリズムに、いい意味での不協和音が割り込んだ。パスではなくドリブルを繰り出す三笘を意図的に使ったと伊東が続ける。

「後半になっても自分のところに相手が来て、逆に薫(三笘)がかなり空いていた。そこでサイドを変えると薫が1対1になって、数多くのチャンスが生まれた」

 今夏に新天地を求めたベルギーリーグで結果を残す三笘を、もちろんオマーンも把握していた。しかし、ここまで脅威を与えるとは想像していなかったのだろう。

 必然的に伊東だけでなく三笘も警戒し始める。三笘にとっては想定内の展開であり、真ん中寄りのエリアでプレーする傾向が強かった前半の南野から一転して、あえて左タッチライン際に陣取ってオマーンの守備網を左右に広げた。

「右サイドの伊東選手が開くので僕も開いて幅を取って、相手の中盤とサイドバックの選手を引きつけて押し込む形を増やそうと思いました。中央のスペースが空けば、その分だけ味方の中盤の選手がうまく使ってビルドアップもしやすくなるので」