川崎フロンターレが2度目のJ1リーグ連覇を達成し、通算優勝回数を2位タイの「4」に伸ばした。昨年オフと東京五輪の前後に主力が次々と海外へ移籍しながらも、夏場に大型補強を成功させたライバル勢の追随を許さない戴冠だった。実際に戦った選手たちは、歴史的な独走を演じた昨シーズンとは「一味違う」と強調する。派手な補強とは無縁の川崎が、黄金時代を築き上げつつある背景を探った。(ノンフィクションライター 藤江直人)
J1連覇も「昨シーズンとは一味違う」
2017シーズン以降の5年間で2度のJ1リーグ連覇を達成。黄金時代を手繰り寄せた川崎フロンターレは、通算優勝回数を4回として横浜F・マリノスに並び、8回で歴代トップに立つ鹿島アントラーズを追う2位に浮上した。
マリノスも鹿島もJリーグが産声を上げた1993年のシーズンから、トップカテゴリーで戦う「オリジナル10」なのに対して、後発組の川崎がJ1に定着したのは2005年のシーズン。歴史の差を急速な勢いで埋める軌跡が伝わってくる。
しかも、4位だった2019シーズンはYBCルヴァンカップで初優勝。年間最多勝ち点や最多勝利数などを次々と塗り替えた昨シーズンは天皇杯との二冠に輝き、今シーズンも連覇を決めた段階で昨シーズンの勝ち点を上回った。
直近の5年間で手にしたタイトルは「6」を数える。それでも今シーズンに関しては、実際に戦った選手たちは全く異なる感覚を抱く。キャプテンのDF谷口彰悟は「昨シーズンとは一味違う」と振り返りながらこう続けた。
「周囲から見れば順調そうに思われたかもしれないけど、実際には1試合1試合を必死に戦い、ギリギリのところを勝ちに持って来られた。ホッとしたのが正直な気持ちです」
谷口の述懐通りに決して順風満帆なシーズンではなかった。もがき苦しんだ記憶をたどっていけば、東京五輪後の8月にどん底の状態を味わわされている。
14日の柏レイソル戦で今シーズン初の無得点に終わって引き分けると、続く21日のサンフレッチェ広島戦も1-1でドロー。中3日で臨んだ25日のアビスパ福岡戦では0-1で、今シーズンで初めてとなる黒星を喫した。
しかも、福岡戦を終えた時点で猛追してきたマリノスに勝ち点1差にまで肉迫された。2009シーズンから川崎でプレーする最古参選手で、今シーズンから副キャプテンとして谷口を支える30歳のDF登里享平が当時をこう振り返る。
「本当にチームが崩れそうな時でした」
今夏の移籍期間で川崎を支えてきた東京五輪代表コンビ、MF田中碧がフォルトゥナ・デュッセルドルフ(ドイツ)へ、FW三笘薫がブライトン(イングランド)への完全移籍を経てユニオン・サンジロワーズ(ベルギー)へ旅立った。