7大会連続7度目のワールドカップ出場へ向けて、苦しい戦いが続く日本代表に救世主が舞い降りた。9月の初戦で敗れたオマーン代表と、敵地で再び対峙した日本時間11月17日未明のアジア最終予選第6戦で、後半開始から投入された24歳のMF三笘薫が得意のドリブル突破から決勝点をアシスト。日本を3連勝とグループBの2位浮上に導いたニューヒーローが、A代表デビュー戦でまばゆい輝きを放った背景を探った。(ノンフィクションライター 藤江直人)
崖っぷちの戦いで確かな爪痕を残した
24歳のアタッカー
歓喜に沸くベンチ前で日本代表の森保一監督からかけられた言葉を、三笘薫ははっきりとは覚えていない。それでも右手を介して、熱い思いがしっかりと伝わってきた。
「握手をしながら『よくやった』と、声をかけられたと思うんですけど……」
勝利を祈りながら戦況を見守った、リザーブの選手たちも笑顔で三笘を出迎えた。それだけの価値がある爪痕を、24歳のアタッカーは敵地のピッチに刻み込んだ。
9月の初戦で敗れたオマーン代表とのリベンジマッチ。返り討ちにあえばワールドカップ出場へ黄信号がともる崖っぷちの戦いで、前半の日本は閉塞感に支配された。
パスはつながる。試合も支配する。しかし、オマーンに脅威を与えられない。ボールを持たされているとも形容される展開のまま、ともに無得点で折り返した。
迎えたハーフタイム。森保監督が動いた。柴崎岳に代わって投入された三笘が左サイドに配置され、それまで左サイドだった南野拓実が中央に回った。
緊張と興奮とが交錯するA代表のデビュー戦へ。森保監督から授けられた単純明快にして、それでいて迷いを吹き飛ばす指示を三笘はこう明かしている。
「前への推進力を出して、どんどん仕掛けろと言われました」