「ツタヤがピザハットの買収を計画しているとする。はたして、これはよいアイデアだろうか?」――なんの前ぶれもなく面接官から、このような質問を投げかけられるのが、戦略コンサルティング会社の面接なのだという。こうした事前の準備なしには対応不可能と思われるニッチな分野で、10年以上にわたって世界トップの位置を占め続けているベストセラーの最新版、それが『戦略コンサルティング・ファームの面接試験 新版』である。著者はハーバード大学就職課を皮切りに世界中で10万人以上の戦略コンサルタント志望者の面接を指導してきた人物。面接試験対策だけでなく、コンサルタントのような戦略思考が身に着けられると評判の本書から、ポイントを紹介していく。(訳:辻谷一美)

戦略コンサルタント志望者への質問Photo: Adobe Stock

戦略コンサルタントは、自らの頭脳を売る仕事だから...

 私が学生からよく質問を受けることの1つは、沈黙についてである。「面接中に沈黙の時間が流れてもよいでしょうか?」ということだが、これに対する答えはYesでもあり、Noでもある。たとえば、計算を行っているとき、重要な情報をメモに書き出しているとき、図表やグラフを作成しているときなどは、沈黙が許される時間だ。

 とは言っても、これらの作業を行っている間ずっと黙ったままでは気まずい空気になってしまい、面接官も次第にいらついてくるので、沈黙は最長でも1分以内に抑えておくべきである。

 一方で、単に発言の内容が思いつかず、窓の外や自分の足元を見たりしているだけの沈黙は許されない。特に、ケースが始まってからすぐの沈黙は致命的だ。面接官がケースを出題した後も、あなたが押し黙ったままで議論がまったく進まなければ、万事休すである。

 あなたがケースの途中で行き詰まってしまい、面接官のほうから助け舟を出してくれないような場合、いくつかの対処法がある。まずは、少し時間を取って、ここまでの議論を振り返ってみよう。おそらく、あなたは細かいポイントに入り込みすぎたか、どこかで議論を脇道にそらしてしまったかの、どちらかである。

 議論を振り返ることによって泥沼の状態から抜け出し、正しい方向へ軌道修正を図れる可能性が出てくる。ケースに取り組む際は、マクロな視点で全体を俯瞰する姿勢が重要だ。たいていの場合、議論を振り返ってみれば、自分がどこで脇道にそれてしまったかがわかるだろう。

 次に、ケースの議論を行う中で得た情報を、もう一度見直してみる。最初はあまりたいしたものではないように見えた情報が、ケースが進むにつれて実は重要な意味を持っていたと気づく、というのはよくあることだ。

 第三の方法は、頭の中で「5C分析」を行って、議論から抜け落ちてしまっている視点がないかを調べてみる。5Cとは、Customer(顧客/市場)、Company(自社)、Competitor(競合)、Cost(コスト構造)、Channel(流通チャネル/サプライチェーン)の5つだ。

 最後に、上の4つの方法をとってもまだ行き詰まっているのであれば、面接官に助けを求めよう。困った状況で相手に助けを求めることは、けっして恥ずべきことではない。実際のコンサルティング業務で同じプロジェクト・チームのメンバーとして働くことを考えた場合、あなたが1人で壁に向かって頭を抱えながら時間を浪費しているよりも、素直に助言を求めてくるほうがずっとよい。ただし、面接官に助けを求めることができるのは、1回限りだと思っておこう。

*訳注:ここでは原書に従って訳出したが、一般的にはCostとChannelの代わりに、Collaborator(自社への協力者)とContext(ビジネスを取り巻く背景・環境)が挙げられている場合が多い。