戦略コンサルティング会社の面接官(インタビュアー)は、あら探しをするかのように、志望者が面接で話す言葉をつぶさにチェックしている。なぜなら、クライアントはコンサルタントに対して、同様のことを常に行っているからだ。このことは『戦略コンサルティング・ファームの面接攻略法』においても、ポイントとなっている。

言葉選びは慎重のうえにも慎重に

 戦略コンサルタントは、クライアント企業の大勢の社員と接することになる。クライアントと最初に接するミーティングは和やかな雰囲気で行われるのが常だが、それ以外の打ち合わせは必ずしもそうとは限らない。

 クライアントの内部には、外部のコンサルタントが入ってくることを不快に思っている社員もいれば、コンサルタントがミスを見つけて、社内での自分の評価が下がってしまうことを恐れる社員もいる。さらには、なんとかしてコンサルタントの面目をつぶそうとする者までいるのだ。彼らはコンサルタントの発言のあらを探そうとする。

 それゆえ、インタビューのときに志望者は、自分が発する言葉を慎重に選ぶ必要がある。もし、あなたが「クライアントは“常に”○○すべきである」という趣旨の発言をした場合は、インタビュアーがどう切り返してきても、自分の発言を正当化できるようにしておかなければならない。インタビュアーが特に気難しい人物で、あなたが言葉の選択を誤っていると感じた場合には、あなたの発言が必ずしも当てはまらないような複数の状況を提示して、本当にあなたの見解が“常に”正しいのか、その論拠を攻撃してくる可能性もある。

 保守的すぎると思うだろうか。しかし、これが現実だ。上記の例で言えば、「たいていの場合、クライアントは○○すべきである」という表現のほうがはるかによい。“常に”と言うよりも、“たいていの場合”と言うほうが、相手から攻撃を受けたときに自分の発言を弁護しやすくなる。

 信じ難いかもしれないが、私はマッキンゼー時代に、クライアントへのプレゼンテーションで使うたった1つの言葉について、どのような表現を選択すべきか、パートナーやプロジェクト・マネジャーと何十分も議論したことが何度もある。

 クライアントが売上高10億ドルの事業部門を売却すべきだと考えた私は、まずパートナーを説得しなければならなかった。45分で自分の提案の論拠を説明してパートナーを説得した後、さらに15分をかけてクライアント向けのプレゼンテーションで用いる言葉を「事業部門の売却は必要不可欠である」とすべきか、「事業部門の売却を強く勧める」というややマイルドな表現にすべきか議論した。

 このときは「必要不可欠である」のほうがよいという流れになったが、それを決めるまでに、本当にそこまで強い表現を用いることを正当化できる十分な根拠があるのかについて、私たちは延々と議論した。

 なぜ、コンサルティング・ファームはこのようなことを行うのだろうか。それは、先述した「往々にして正しくとも、けっして事実に基づく根拠なくして判断してはならない」の原則による。この原則に従うためには、大きく2つのアプローチがある。

1)より多くの事実に基づく根拠を探し出し、結論の妥当性をより強固にする(このアプローチは2)よりも時間はかかる)。
2)すでに持っている事実を用いて、結論の表現を多少マイルドにする。