コロナ禍や自粛生活などの「環境の変化」により、多くの人が将来への不安を抱え、「大きなストレス」を感じている。ストレスを溜め込みすぎると、体調を崩したり、うつなどのメンタル疾患に陥ってしまう。
そんな中、このコロナ禍に22万部を突破したベストセラー『ストレスフリー超大全』では、著者の精神科医・樺沢紫苑氏は、ストレスフリーに生きる方法を「科学的なファクト」と「今すぐできるToDo」で紹介している。「アドバイスを聞いてラクになった!」「今すべきことがわかった!」と、YouTubeでも大反響を集める樺沢氏。そのストレスフリーの本質に迫る。
「本音」は親しい人だけにしよう
本音は言ったほうがいいのか、それとも本音を言わずに我慢したほうがいいのか。それについての考え方を紹介しましょう。
本音とは、その人の「本心」です。本心は口に出さない限り、自分以外は誰も知り得ない内容です。ですから、「本音を話す」というのは、「最も深い自己開示をする」ということに相当します。
関係性の浅い人に本音を話しても、否定されたり、拒絶されたりするのは当然です。それは、信頼関係のステップを飛ばしているからです。関係性の浅い人は、「あなたの本音なんか聞きたくない」というのが相手側の本音です。
「思い切って本音を言ったら、険悪な雰囲気になった」「本音を言ったら、受け止めてもらえず傷ついた」という人は、そもそも本音を打ち明ける相手やタイミングを間違っています。
対人関係の三重円とは?
「対人関係療法」において、「対人関係の三重円」という考え方があります。
3つの円を的のように描きます。
円の一番内側は、「重要な他者」です。家族や恋人、親友など、あなたにとってかけがえのない存在の人です。
二番目の円は、友人や親戚など、日常生活で大切な人たちが入ります。
さらにその外側の三番目の円に、職業上の人間関係が入ります。
多くの人は、最も外側の人とも親密な人間関係を築こうとしてしまい、多くの精神的エネルギーを浪費し、精神的に疲れ果ててしまいます。ときにはうつ病に陥ることもあるでしょう。
三番目の人間関係は、ボチボチでよいのです。あなたの「本音」「本心」をわざわざ話す必要などありません。本音を話すことで、逆に誤解をされたり、傷ついたり、傷つけたりする問題が生じてしまうのです。
職場での本音は「迷惑」である
あなたは、職場のAさん(たまに雑談する程度の関係)から、「ちょっと相談がある」と呼び出されたとしましょう。
Aさんは、「母親が認知症になり、その介護でものすごくたいへんな話」を、あなたに2時間も延々と話し続けました。あなたは、どう思いますか。
「私に相談してくれて本当に嬉しい」と思いますか。絶対に思わないでしょう。「なんで、そんなに親しくもないAさんの重たい話を2時間も聞かなきゃいけないのだろう……」と思うはずです。
親しくもない人に、本音で相談されても相手は「迷惑」です。「聞きたくもないあなたの本音」を聞かされる相手の気持ちも考えるべきです。
「親密度」がズレた相手に本音を話すべきではありません。
「対人関係の三重円」に照らし合わせて、それに応じた話題を選ぶようにしましょう。中心にいる「真に親しい人」「重要な他者」にのみ、本音を打ち明けるべきなのです。
職場の人間関係に疲れる人は、一番目の「重要な他者」と三番目の「職場の人間関係」を混同しているのです。だから、疲れ果てる。もっとドライに付き合うようにしてみましょう。
精神科医、作家
1965年、札幌生まれ。1991年、札幌医科大学医学部卒。2004年からシカゴのイリノイ大学に3年間留学。帰国後、樺沢心理学研究所を設立。「情報発信を通してメンタル疾患、自殺を予防する」をビジョンとし、YouTubeチャンネル「樺沢紫苑の樺チャンネル」やメルマガで累計50万人以上に精神医学や心理学、脳科学の知識・情報をわかりやすく伝える、「日本一アウトプットする精神科医」として活動している。
コロナ禍に22万部のベストセラーとなった著書『精神科医が教える ストレスフリー超大全』(ダイヤモンド社)のほか、シリーズ80万部の大ベストセラーとなった著書『学びを結果に変えるアウトプット大全』『学び効率が最大化するインプット大全』(サンクチュアリ出版)など30冊以上の著書がある。