円キャリートレード復活、ドル安で鮮明にPhoto:Biscut/gettyimages

 ここ数十年間にヘッジファンドを消滅させ、市場を幅広く暴落させたことで知られる人気の為替トレードが、予想外のドル安で打撃を被っている。

 市場では、ヘッジファンドなどがここ数カ月にキャリートレードと呼ばれる大型取引を膨らませていたとの指摘がある。キャリートレードとは、特に円や、ユーロなども含む超低金利の通貨を借り、その資金をドルなど金利上昇が予想される通貨に投じる取引手法だ。

 新型コロナウイルスの新たな変異株を巡る動揺が市場に広がった11月26日、そうした取引の一部が巻き戻された。円は同日、対ドルで2%近く跳ね上がり、2020年3月のコロナパニックの最悪期以降で最大の急騰となった。ユーロと英ポンドもドルに対し大幅に上昇した。これは、市場に売りが広がり、投資家が安全資産としてのドルに避難する際の、通常のトレーディング戦略に逆行する動きだ。

 29日になって投資家が変異株の影響に関する詳細をさらに消化し、ドルはいくらか反発したが、30日には再び売られている。こうした極端な動きは、平穏な市場が長く続いてきた中で積み上がった大きな取引が、いかに打撃をもたらす恐れがあるかを浮き彫りにしている。

 仏銀大手ソシエテ・ジェネラルのFXストラテジスト、キット・ジャックス氏は「今回の値動き加速の背景には、ポジション解消があった」と指摘。取引に参加したばかりの人たちについては、「最後に飛びついた人たちは窮地に陥るだろう」と述べた。