書籍のご案内

「この美術、おもしろすぎる…」
 中高生たちを熱狂させ、大人たちの心も揺さぶる「人生が変わるアートの授業」がこの一冊に!

「自分だけの答え」が見つかる 13歳からのアート思考』末永幸歩著 定価1980円(本体1800円+税10%)ダイヤモンド社

私たちは「1枚の絵画」すらもじっくり見られない──著者より

 みなさんは、美術館に行くことがありますか?
 美術館に来たつもりになって、次の絵を「鑑賞」してみてください。

クロード・モネ (1840〜1926年)《睡蓮》 キャンバスに油彩──印象派の中心人物として知られるモネが、彼が愛した水生植物の睡蓮を題材に、季節や時間とともに変化する光の効果をとらえた一連の絵画作品の1つ。 岸や空を描かず、大胆に水面だけを描いた構図からは、日本美術の影響も感じられる。

 さて、ここで質問です。
 いま、あなたは「絵を見ていた時間」と、その下の「解説文を読んでいた時間」、どちらのほうが長かったですか?

 おそらく、「ほとんど解説文に目を向けていた」という人もかなり多いと思います。
 あるいは、「鑑賞? なんとなく面倒だな……」と感じて、すぐに画面をスクロールした人もけっこういるかもしれません。

 私自身、美大生だったころはそうでした。
 いま思えば、「鑑賞」のためというよりも、作品情報と実物を照らし合わせる「確認作業」のために美術館に行っていたようなものです。

 いかにも想像力を刺激してくれそうなアート作品を前にしても、こんな具合なのだとすれば、まさに一事が万事。

「自分なりのものの見方・考え方」などとはほど遠いところで、物事の表面だけを撫でてわかった気になり、大事なことを素通りしてしまっている──そんな人が大半なのではないかと思います。

 ……でも、本当にそれでいいのでしょうか?

 以前、モネの《睡蓮》を見た4歳の男の子が、こんな言葉を発したことがあったそうです。

「かえるがいる」

 みなさんは先ほどの絵のなかに「かえる」を発見できましたか?

 じつをいうと、この作品のなかに「かえる」は描かれていません。それどころか、モネの作品群である《睡蓮》には、「かえる」が描かれたものは1枚もないのです。

 その場にいた学芸員が「えっ、どこにいるの」と聞き返すと、その男の子はこう答えたそうです。

「いま水にもぐっている」

 私はこれこそが本来の意味での「アート鑑賞」なのだと考えています。
 その男の子は、作品名だとか解説文といった既存の情報に「正解」を見つけ出そうとはしませんでした。むしろ、「自分だけのものの見方」でその作品をとらえて、「彼なりの答え」を手に入れています

 彼の答えを聞いて、みなさんはどう感じましたか?
 くだらない? 子どもじみている?

 しかし、じっと動かない1枚の絵画を前にしてすら「自分なりの答え」をつくれない人が、激動する複雑な現実世界のなかで、果たしてなにかを生み出したりできるでしょうか?

13歳からのアート思考』は、私がふだん行っている授業をバージョンアップさせた体験型の書籍です。

 タイトルには「13歳からの……」とありますが、大人の方にこそ「13歳」の分岐点に立ち返っていただき、「美術」の本当の面白さを体験してほしいというのが、私の願いでもあります。

(『「自分だけの答え」が見つかる 13歳からのアート思考』「はじめに」より)