「社員全員に読んでほしくてまとめ買いしました」
そんな感想が寄せられるほど、ビジネスパーソンがこぞって読んでいるのが、アート鑑賞を通じて「ものの見方」を広げる方法を解説する『「自分だけの答え」が見つかる 13歳からのアート思考』(著:末永幸歩)です。なぜなら、世の中の状況が激しく変化し続け、先行きが見通せない時代の中、他人の意見に流されずに「自分だけの答え」をつくる能力が、ビジネスの現場でかつてなく重要になっているからです。
今回は、大垣書店麻布台ヒルズ店(東京・港区)で8月に開催された、著者・末永さんのご登壇イベント「『アート思考』夏休み特別講座」(ダイヤモンド社「The Salon」主催)より、「自分の頭で考える力」を高めるアート鑑賞法をダイジェストでご紹介します。
(構成/ダイヤモンド社コンテンツビジネス部)

「社員全員に読んでほしくてまとめ買いしました」との声も!ビジネスパーソンがこぞって読んでいる異色の美術本が教える「自分の頭で考える力」が高まる“すごい方法”とは?Photo:Adobe Stock

美術の授業の「真の目的」とは?

末永幸歩(以下、末永) 私はもともと、中学・高校で美術を教えていましたが、「美術とは、何を教える教科なのだろうか?」という疑問をずっと抱いていました。

 というのも、従来の学校教育が重視してきた、絵を描いたりものをつくったりする「技術」や、過去の芸術作品にまつわる「知識」の習得が、子どもたちにとって必要不可欠だとはどうしても思えなかったからです。

 私たちはいま、変化が激しく、絶対の答えが存在しない、とても不確実性の高い時代を生きています。そんな時代に求められるのは、教わった正解を暗記する力ではなく、状況に応じて自分の頭で考えて、「自分だけの答え」をつくりだす能力のはずです。

 であれば、美術という教科の真の目的は、アート鑑賞を通じて「自分だけの答えをつくりだす作法=アート思考(※)」を身につけることではないか。私はそう考えるようになりました。

※アート思考…本書P.13では、以下のような思考プロセスとして紹介しています。
1)「自分だけのものの見方」で世界を見つめ、
2)「自分なりの答え」を生み出し、
3)それによって「新たな問い」を生み出す

 このような問題意識から、私は現在、アート鑑賞によって「ものの見方を広げる」ことに力点を置いたワークショップや授業を全国の教育機関で展開しています。

 また、既存の常識にとらわれず、柔軟かつ斬新なアイデアをつくりだす「アート思考」は、ビジネスの現場での汎用性が高いと話題を呼び、これまでパナソニックや住友商事など多くの企業で講演や研修もおこなってきました。

「アート思考」を実践しよう

末永 それでは、2~3人1組でアート思考の実践ワークに取り組みながら、「自分なりの答え」をつくっていきましょう。今回鑑賞するのは以下のアート作品です。
(ぜひ、この記事を読んでいる皆さんも、ワークに取り組んでみてください)

「社員全員に読んでほしくてまとめ買いしました」との声も!ビジネスパーソンがこぞって読んでいる異色の美術本が教える「自分の頭で考える力」が高まる“すごい方法”とは?作品の詳細はこちら

ステップ1:作品を観て気づいたこと・感じたことを書き出す
末永 最初に、じっくりと作品を観察して、気づいたこと・感じたことをできるだけ多く紙に書き出してください。たとえば、たくさん点があると思ったら「点々がある」、草むらみたいだと感じたら「草むらみたい」などと書けばOKです。

 どんなにささいなことでも構いません。まずはチャレンジしてみましょう。

ステップ2:気づきを発表し、新しいアイデアを書き足す
末永 次に、書き出した内容をグループ内で発表します。そして、他の人の話を聞いて「自分にはない視点だ」と感じたり、新しいことに気づいたりしたら、先ほどの紙に書き足してください。

ステップ3:ものの見方をガラッと変えて鑑賞する
末永 このステップでは、3つの手法を使って、ものの見方をガラッと変えてみましょう。

 1つめは「五感」を駆使する方法です。一般的に、アート鑑賞というと「目=視覚」を用いるイメージが強いと思いますが、実はその他の感覚器官も鑑賞に活かせます。

 たとえば、「鼻」を使ってこの作品を嗅いだら、どんな匂いや香りがしそうか? 「手」でこの作品の実物を触ったら、どんな感触がしそうか? 「耳」を澄ましたら、どんな音が聞こえてきそうか? このように五感を働かせながら、想像を膨らませて鑑賞することができます。

 2つめが「変身」という手法です。たとえば、もし自分が絵を描いた本人だったら、この作品を鑑賞して何を感じるか? 絵の中に入り込んで「絵の登場人物」になったら、何が見えてきそうか? 自分以外の人になりきって、想像してみましょう。

 3つめが、作品にぐっと近寄ったり、逆に距離を置いたりして、「視点」を変えながら鑑賞する方法です。

 これらをすべて実践するのが難しければ、「やってみたい」と思った手法をいくつかトライして、気づいたことをさらに書き出してみましょう。

ステップ4:気づきを発表し、新しいアイデアを書き足す
末永 ステップ3で気づいたことをグループ内で発表しつつ、他の人の意見で「面白い」と感じたことがあれば、気づきを書き足してください。

ステップ5:作品タイトルと説明文を考えよう
末永 ステップ1~4で考えてきたことをベースに、絵のタイトルと説明文を自分なりに考えてみましょう。「自分だけの答え」をつくることが目標なので、この絵の本当のタイトルを知っている方は、いったんその知識はわきに置いてください。

「社員全員に読んでほしくてまとめ買いしました」との声も!ビジネスパーソンがこぞって読んでいる異色の美術本が教える「自分の頭で考える力」が高まる“すごい方法”とは?アート思考の実践方法を教える末永さん

ステップ6:他の人が考えた作品タイトルの中から、気になるものを選び出そう
末永 他の人が考えた作品タイトルを見て回って、「なぜこのタイトルにしたんだろう?」「これはどういう意味だろう?」と気になるものに、付箋を貼ってみてください。