驚くべき脳の働き

 人間の脳の働きについては、次のようなことが判明しています。

 喉が渇いたとき人が水の入ったコップに手を伸ばし、それを飲むという行為は、昔から喉が渇いたから自分の意志で手を伸ばし、コップを取って水を飲んだ、と理解されてきました。

 しかし、最近の脳科学は、そのことを否定しています。

「水を飲みたい」という意志決定は、人間の無意識の部分でなされて、そこから2方向に信号が伝達される。

 そしてわかりやすく述べると、0.1秒ぐらいで「水を飲みたい」という意識が生まれ、0.3秒ぐらいで手が動く。

 この0.2秒のタイムラグがあるために、人間は自分の意志で水を飲みたいと決定して手を伸ばした、と錯覚しているのであり、実は無意識の部分が意志決定のほとんどを担っていることが、明らかになってきています。

 人間の脳の働きについて、人間が意識できる部分は、せいぜい1割ぐらいだろうと僕は思っていたのです。

 しかし、脳研究の第一人者である池谷裕二東京大学薬学部教授と対談したとき、先生は即座におっしゃいました。

「とてもそんなにありません。数パーセントぐらいじゃないですか」

 人間の意志決定や行動のほとんどは、脳の無意識の部分がコントロールしている。宇宙の構成要素におけるダークエネルギーやダークマターのような存在が、無意識の領域、といえるかもしれません。

 結局、脳と宇宙は、未だにわかったようでわからないことが多くある点で、とてもよく似ているのです。