サルたちは3つの鳴き声を
聞き分けている

 サルたちは明らかに、3つの鳴き声を聞き分けている。

 コンドルだよ、蛇だよ、ピューマだよと。これが言語のスタートではないか? 要するにコミュニケーションのツールとして言語が生まれたんじゃないか、という説が今までは有力だったのです。

 でも、3つの「ギャー」は具体的な危険信号を発しているだけで、その機能はとてもシンプルです。

 この「ギャー」から、どうして抽象的な思考を紡ぐ言語へと発展していくのか。「ギャー1、ギャー2、ギャー3」でおしまいです。

 さらにいえば、たとえば求愛の場面を考えてみても、「ギャー」と叫んで食物を渡すとか、毛繕いをしてあげたり、ハグするだけでも好意は伝わります。

 こういうコミュニケーションのために、言語は生まれてきたと結論づけていいのか、という批判も出てきました。

 そして、人間の脳が発達して考えることが可能になっても、それをどのようにまとめるのか、言語がなければ思考はまとまらないではないか、という考え方が支配的になってきました。

 その考え方の裏づけとなったのが、FOXP2という遺伝子の存在が明らかになったことでした。

 考えるツールとしての言語を獲得したことで、人間は世界や自らの存在について、根源的な問いを持つようになったのです。