中国人民銀行(中央銀行)は決して、西側諸国の中央銀行のように政治から独立した存在ではなかったが、それでも経済運営を担う組織の中で特別な地位が与えられていた。だがここにきて、金融業界の刷新を狙う習近平国家主席の取り組みがこれを奪おうとしている。人民銀は今週、足元で示唆していた政策シグナルに反する格好で、預金準備率を引き下げると発表。事実上、与信拡大に向けた原資を市中に追加提供した。背景にあったのは、成長の急減速に危機感を募らせた指導部の圧力だ。中国では目下、習氏が主導して経済における資本主義勢力を抑制する動きが広がっており、人民銀を筆頭に金融当局組織が習指導部の追及にさらされている。習氏が派遣する規律検査官の監視下にある金融組織の中でも、人民銀は間違いなく最も重要だ。人民銀は世界有数の規模を誇る金融システムを監督する立場にある。利上げなど金融政策に関する重要決定については、政権中枢から承認を得る必要があるものの、人民銀は長年にわたり国内外の投資家の信認を得ようと努めてきた。中国の市場が発展するのに伴い、その影響力も世界に及ぶようになったためだ。