マックス・ラミレズ氏は、インターネット通販最大手アマゾン・ドット・コムのトラックのことを知ったとき、困った事態になると考えた。約2年前、アマゾンの従業員たちは1台のトラックに手を加え、同社の最低時給が約16ドルだと宣伝する看板を取り付けた。そしてそのトラックを、ラミレズ氏が運営を手助けするアマゾンのライバル倉庫があるテキサス州の小さな都市に走らせた。数カ月内に、ラミレズ氏が勤務するマットレスメーカー、サータの一握りの従業員がアマゾンに移っていった。「われわれは競争するしかなかった」とラミレズ氏は話す。同社は最低時給を約2ドル引き上げて15ドルにし、その後さらに約1ドル引き上げたという。全米の企業が労働者の確保に奔走する中、アマゾンは事実上、未熟練労働者の賃金や福利厚生の基準を設定する存在になりつつある。ビジネスの専門家たちは長年、従来の小売業を破壊する「アマゾン効果」と呼ばれる現象を研究してきた。今やアマゾンの一挙手一投足は、インフレや地域的な雇用市場、労働基準をはじめ、小売業界の枠を超えて全米の地域市場に波及効果をもたらしている。連邦政府の労働データの調査や経済学者、研究者、地域の雇用当局者、アマゾンの現・元従業員への取材で明らかになった。