2008年度、東芝は実質自己資本が底を突きかけ、債務超過の瀬戸際にあった。西田厚聰前社長が掲げた「社会インフラ+半導体」複合経営のつまずきである。危機を打開すべく今年6月に就任した佐々木則夫新社長は、「複合経営」再構築の重荷を背負う。課題は山とある。どの患部に、改革のメスが入れられるのか。(取材・文/『週刊ダイヤモンド』編集部 柴田むつみ)
財務悪化のさなかも
社会インフラ向け投資は衰えず
8月24日、横浜市にある東芝の磯子エンジニアリングセンターでは、約20年ぶりとなる新棟の竣工式が行なわれた。東芝が注力する原子力発電部門の設計拠点だけに、最新の免震構造で、約100億円が投じられた。
米国の原発大手、ウェスチングハウス社を54億ドル(東芝の負担分は42億ドル)かけて買収したのは、西田厚聰前社長の就任2年目、2006年のことである。以降、矢継ぎ早に原発関連に投資しており、1000億円以上を積み増しした。
07年のカザフスタンでのウラン権益取得、09年に入ってからは東京電力などと共同でのカナダのウラン開発大手への出資、原発燃料加工の原子燃料工業の子会社化など枚挙にいとまがない。
従来のプラント建設だけでなく、ウランを採掘して原発燃料を製造する“上流”事業を強化し、原子力の“ワンストップサービス”を目指し、陣容を拡大しているのだ。
積極投資は原発関連にとどまらず、社会インフラ部門全体に及ぶ。6月に就任した佐々木則夫新社長は、中期経営計画(09~11年度)で、社会インフラ部門にかつてない9%もの成長率を見込む。