国際テロ情勢における
2つの大きな出来事
国際テロ情勢の視点から、2021年は大きく2つの出来事があった。
第一は、21年はあの9.11同時多発テロからちょうど20年だったことだ。そのニュースは国内外のメディアでも大きく取り上げられた。
9.11同時多発テロ以降、米国主導の有志連合はアフガニスタンへの攻撃を開始し、当時のタリバン政権が崩壊し、アルカイダメンバーの拘束や逮捕も相次いだ。それにより、アルカイダは組織的に弱体化し、アルカイダを支持する武装勢力が中東やアフリカなどに台頭したものの、11年5月のオサマ・ビンラディンの殺害もあり、今日では差し迫った安全保障上の脅威ではなくなっている。
第二は、アフガニスタンでは米軍の完全撤退とタリバンの実権奪還だ。バイデン大統領はオバマ政権の時から米軍のアフガン駐留に懐疑的な考えを持っていたが、自身が大統領となって撤退を完了させ、今後は中国を念頭に置いたインド太平洋に重点を移す姿勢を鮮明にしている。
タリバンは旧民主政権の軍・警察の脆弱(ぜいじゃく)性も相まって、スピーディーに首都カブールを掌握したが、テロ組織との関係断絶や女性の人権など国際社会は依然として懸念を持っており、今後の国家運営では多くの課題を抱えている。
では、22年の国際テロ情勢はどうなるのであろうか。ここでは、それを予測する上で重要となる21年の動向を簡単に振り返ってみたい。