「中華物産店」が日本中に増殖する深い理由、あなたの街にも間もなく開店?2021年に開店した都内の中華食材店(著者撮影、以下同じ)

「中華物産店」という、ちょっと変わった業態がある。店内で売られているのは中国や台湾などから仕入れた珍しい中華食材だ。こうした店舗は、都内ではJRターミナル駅の上野や池袋、あるいは横浜の中華街や中国出身者が多く住む埼玉県川口市などに見られたが、最近あちこちに出現するようになった。東京メトロ・丸ノ内線の東高円寺や有楽町線の月島など枚挙にいとまがないが、「物産店」の立地はかなり広域化している。コロナ禍の東京で、いったい何が起こっているのだろうか。(ジャーナリスト 姫田小夏)

帰国できない在日中国人、日本の調味料の味がなじまない

 都心における「中華物産店(以下、物産店)」の増加は、首都圏に住む中国人の生活事情を映し出している。

 例えば、コロナ禍の在日中国人の生活の変化もそのひとつ。

 日本語学校に留学する陳宇軒君(仮名)は、週1でJR山手線の新大久保駅にある中華物産店に足を運ぶという。ここで買うものは主に中国製の調味料だ。もともと陳君の食生活はコンビニの弁当や外食が多かったが、弁当は食べ飽き、中華料理店の休業が続いた中で、やむを得ず自炊をするようになったと語る。

「中華物産店では、中国から輸入されたしょうゆやみりん、オイスターソース、ラオガンマー(ラー油)を買います。日本産のしょうゆやみりんは味が薄くて、どうしてもなじまないんです」

 新型コロナウイルスがまん延する前までは、中国の実家にも帰れたし、訪日した親や親戚が中国の食材を持ってきてくれた。しかし、今、往来が途絶える中で、中国人留学生たちは祖国の味をより渇望するようになった。