ベトナム人留学生の万引き、モンゴル人留学生の無免許運転、ネパール人留学生の刃物を持ち出した喧嘩――、アジア人留学生が起こす問題が多発し、その対応に追われる日本語学校。その現場は、もはやまともな日本語教育どころではない、というところにまで来ている。
元凶は、日本政府の政策にあるといえるだろう。政府は2013年に、アベノミクスの第三の矢として「日本再興戦略」を打ち出し、「人材こそが最大の資源」という認識から“優秀な外国人留学生”の積極的な受け入れを始めた。少子高齢化と人口減が急速に進行する中、留学生を就業人口として定着させることも視野に入れ、2020年までに30万人を受け入れる目標を立てた。2019年には29万8980人を受け入れ、目標達成はすでに射程距離に入っている。
注目すべきは、2013年以降2018年までの5年間における“急激な人口増”だ。この短期間で留学生は13万0835人も増えた。この数は、神奈川県海老名市や千葉県成田市の人口に匹敵する。日本語学校への留学生も急増している。2018年は9万79人となり、この5年間で5万7453人も増加した。
現在、留学生の受け入れが可能な日本語学校は全国で749校ある。いずれも規定をクリアした日本語学校として、法務省が告示する日本語教育機関に名を連ねている。中には、留学生をきちんと選考し、寄り添うようにして面倒を見るまともな日本語学校もある。だが、ここで取り上げるのは、リスト中にある大手有名校の惨状だ。
筆者は複数の日本語教師から話を聞いた。この日本語学校をA校とし、登場する日本語教師をBさん、Cさん、Dさん、Eさんとした。それぞれの話から浮き彫りになるのは、学生を金づるとしか思わない日本語学校と、金稼ぎが目的でやってくる留学生、そしてその間に挟まれて報われない労働を強いられる日本語教師たちだ。