新時代の服装のコードは、黒に変わった

 それから家康は、大名を引見するときには黒を着るようになります。大名も「これからの服装のコードは黒なのだ」ということを理解してそれに倣っていったので、権力者のコードは黒へと変わりました。

 その流れが続き時代が下って三代将軍、家光の時代に、羽織に家紋を入れる習いが始まりました。

 さらに江戸も時代が下って、服装のコードが緩くなって町民文化が栄えたときに、町民も紋付袴を着られるようになりました。

 その名残で「紋付袴」が男性の第一礼装として、今も日本社会に存在しているわけです。でも元々のおこりは、それを仕掛けたプロデューサーがいたのです。

 秀吉の時代をひっくり返すために「逆転の発想」から考えたものだったのです。

 いつの時代も、メインストリームが不動のものとして存在しているわけではなく、常に相対的な力関係の中で、何がメインになるかが決まってきます。

 だからこそ「逆転の発想」を発揮して流れを変えられるかどうかが、勝敗を分けるカギとなるのです。

細尾真孝(Masataka Hosoo)
株式会社細尾 代表取締役社長
MITメディアラボ ディレクターズフェロー、一般社団法人GO ON 代表理事
株式会社ポーラ・オルビス ホールディングス 外部技術顧問
1978年生まれ。1688年から続く西陣織の老舗、細尾12代目。大学卒業後、音楽活動を経て、大手ジュエリーメーカーに入社。退社後、フィレンツェに留学。2008年に細尾入社。西陣織の技術を活用した革新的なテキスタイルを海外に向けて展開。ディオール、シャネル、エルメス、カルティエの店舗やザ・リッツ・カールトンなどの5つ星ホテルに供給するなど、唯一無二のアートテキスタイルとして、世界のトップメゾンから高い支持を受けている。また、デヴィッド・リンチやテレジータ・フェルナンデスらアーティストとのコラボレーションも積極的に行う2012年より京都の伝統工芸を担う同世代の後継者によるプロジェクト「GO ON」を結成。国内外で伝統工芸を広める活動を行う。2019年ハーバード・ビジネス・パブリッシング「Innovating Tradition at Hosoo」のケーススタディーとして掲載。2020年「The New York Times」にて特集。テレビ東京系「ワールドビジネスサテライト」「ガイアの夜明け」でも紹介。日経ビジネス「2014年日本の主役100人」、WWD「ネクストリーダー 2019」選出。Milano Design Award2017 ベストストーリーテリング賞(イタリア)、iF Design Award 2021(ドイツ)、Red Dot Design Award 2021(ドイツ)受賞。9月15日に初の著書『日本の美意識で世界初に挑む』を上梓。