これは他人と争うことからの逃げではなく、自分が気持ちよく過ごすためのセルフマネジメントだ。ここでは、怒らない自分をつくる習慣を紹介する。
 適度な運動をする

 ストレス解消法として、友人や家族にグチを言う人もいるだろう。しかしこれは、アンガーマネジメントの見地からはNGである。

 学生時代、英単語を覚えるときに、ノートに何度も書き写したり音読を繰り返したりした経験はないだろうか。五感を使って何度も繰り返し、脳に覚えさせるというスタンダードな記憶術だ。

 グチを言うと、これと同じようなことが起こってしまう。口にするたびに怒りを思い出し、記憶に定着させてしまうのだ。何度も話しているうちに自分で悪い解釈をつけ加え、怒りを増幅させてしまう可能性もある。

 ベストなストレス解消法は、適度な運動だ。マラソンやハードな筋トレなどより、ジョギングやサイクリングなど、長時間続けられる軽い運動がおすすめだ。これらは脳からセロトニンなどの物質を生み出して、リラックス効果をもたらしてくれるといわれている。健康的にストレスを解消して、上手に気分転換しよう。

◇3つの「ログ」で自分を客観視する

 記録によって自分の気持ちを客観視するのも有効だ。ここでは、自分の怒りを振り返り、幸せな気持ちに導いてくれる3つのログ(記録)を紹介する。

 1つ目は、怒りを記録する「アンガーログ」だ。怒りを抑えるには、自分が「どのようなことに、どの程度イライラしているのか」を正確に知る必要がある。怒りを感じたら、その都度その場で、「タクシーの運転手が道を間違えた。2」などと、出来事と怒りの強度を書き留める。

 2つ目は、コアビリーフを見直す「べきログ」だ。アンガーログに書き留めた怒りの裏には、「タクシーの運転手は道くらい覚えておくべき」などといった「~べき」「~べきではない」「~はず」という考え方(コアビリーフ)が隠されている。コアビリーフに気づくと、怒りの原因が見えてくるはずだ。そのうえで、自分の許容範囲を「許せる」「許せない」「まあ許せる」の3段階に分け、「まあ許せる」の範囲を広げられないか考えてみる。

 3つ目は、小さな幸せを記録する「ハッピーログ」だ。私たちは想像以上に、毎日たくさんの幸せを感じている。アンガーログと同様に、小さな幸せをその都度メモすることで、幸せを自覚できるだろう。