◆ムダに怒らない人になる心の持ち方
◇一次感情に向き合う

 怒りは「心のコップ」からあふれ出た水のようなものだ。心のコップには、つらい、悲しい、寂しい、不安などといったマイナスの一次感情がたまっている。コップが一次感情でいっぱいになった結果、怒りという二次感情となってあふれてしまう。

 著者は以前、あるパソコンメーカーから相談を受けたことがある。そのメーカーは顧客から「パソコンが故障した」というクレームを受けて対応したが、それでも顧客の怒りがおさまらないのだという。「ちゃんと修理したのに」と頭を抱えていたが、よくよく顧客の声を聞いてみると「パソコンが壊れたせいで、恥をかいた」ことが問題だった。顧客の一次感情は「恥をかいてつらかった」であり、その気持ちを理解してほしかったのだ。

 怒りを感じたときや相手を怒らせてしまったときに大切なのは、怒りの奥にある一次感情を探ることである。怒りそのものではなく一次感情に対処し、解決に導くようにしよう。

◇権利・欲求・義務を分ける

 心のメガネであるコアビリーフは、決して悪ではない。しかしコアビリーフによって、見方に歪みが生じ、自分も周りも苦しむことがある。

 たとえばあなたが「年長者を敬うべきだ」という考えをもっていると、「年上なのに尊敬されていない」「乾杯の音頭は自分が取るべきだ」などと、些細なことで怒りを爆発させることがあるかもしれない。この考え方は「俺様思考」といい、誰でも簡単に陥ってしまうものだ。

 このような歪みを正すには、権利・欲求・義務を分けて考えるとよい。たとえば夫であるあなたが「残業して疲れて帰ってきたのに、妻は子どもたちと寝ていてイラっとした」とする。「帰宅するまで妻に起きて待っていてほしい」気持ちは「欲求」なのに、本人は「義務」と考えているために、怒りを感じているのだ。しかし同時に、あなたには妻に対して「起きて待っていてほしい」と「欲求」を伝える「権利」がある。

 権利・欲求・義務を分けて考える習慣が身につけば、身近な人間関係でイライラする機会は減っていくはずだ。