想像を絶するスピードとスケールで10兆円企業をつくりあげた経営者から学ぶべきことは多い。孫正義ソフトバンクグループ代表の評伝『志高く 孫正義正伝 決定版』(実業之日本社文庫)の著者井上篤夫氏が孫氏を深く知る人物と対談し、ビジネスパーソンに学びをお届けする連載「ビジネス教養としての孫正義」の第9回。対談相手は、インターネットの父・慶應大学教授の村井純氏。ソフトバンクの社外取締役を務めた当事者が「孫正義 vs NTT」の内幕を語る。(取材・構成/ライター 梅澤 聡)
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孫正義が見つけた“おもちゃ”
「村井さん、これエグいよね」
井上 孫社長と村井教授が初めて出会ったのはいつ頃ですか?
村井 孫さんとの出会いは、1980年代前半に「Intel80286」という16ビットCPUが登場したときです。孫さんはその286チップを、いち早く手に入れたんです。
それを誰かに見せびらかせたいと思って、当時の仕事場に僕を呼びつけたらしい。行ってみると、孫さんは満面の笑みをたたえながら、「村井さん、これ見てよ、エグいよね!」と見せつけてきた。まるで新しいおもちゃを与えられた子どものようでした(笑)。
今までのCPUとはまったく違って、でかくてキラキラ輝いている。二人でそのチップを見つめながら「これが世の中を変えていくんだね」みたいな話をしたことを覚えています。
孫さんは、何か新しいことが起こったときの、興奮のピークの上がり方がすごかったですね。それがいいのか悪いのかは知らないけど(笑)。興奮体質だから新しいのが出てきたら「すげぇ」って言って、その度に会っていました。インターネット関連の会合がある度に、互いに呼んだり呼ばれたりする関係になりました。
僕は95年に岩波書店から『インターネット』という本を出版し、当時は「インターネットといえば村井純」と言ってもらえていましたから、孫さんから「インターネットの第一人者」として認められたんだと思います。
インターネットの父が明かす
ネット黎明期のグレーな話
井上 村井さんといえば、「日本のインターネットの父」と呼ばれる存在です。ぜひ、孫さんと出会ったころ、日本のインターネット黎明期について、お話をうかがいたいと思います。