パンデミックにも対応できる英国王室の徹底した備え
私は、英国在住時にBBCで、英国の地方都市の小さなアパートに一般人として暮らす、王位継承権を持つ老人を取材したテレビ番組を見たことがある。気さくな笑顔で質素な家の中を案内する老人が、年に一度エリザベス女王の主催するパーティーに招かれて、正装で女王とツーショットに収まる写真をうれしそうに見せていたのを覚えている。
また、ビジネス界やファッション界など多彩な活躍をしている若い王位継承権者が頻繁にメディアに登場したりもしている(COSMOPOLITAN「あなたが知らない若き英ロイヤル12人、王位継承順位とともにチェック!」)。
これら王位継承権者は経済的に自立し、自由に活動していて、相続税の減免などはあるようだが、特に国費が投入されることもない。
また、英国では、日本のような「宮家」があるわけではない。あくまで、「個人」が王位継承者に認定されているだけである。
これを王室側から見れば、約5000人の王位継承権者が存在するが、特にコストはかからない。実質的に英国王室以外の人に王位を回すことはないので、特に気を使う必要はない。国内の王位継承権者に特権を与えているわけでもないからだ。
一方、もしも強毒性の感染症のパンデミックで人類の多数が死亡したり、核戦争が起こったりして、王室が滅ぶようなことがあっても、王位継承権者が約5000人もいて、外国にもいるので、誰かが生き残っていれば王位を継承できる。英国王室は、存続のために徹底した備えをしているとはいえるだろう。