自信を失う企業
被害者意識にとらわれるミドル社員

 今のミドル社員がバリバリと活躍していた頃は、長時間労働も、辞令1枚による転勤やジョブローテーションも当たり前のことでした。今でいう上司からのパワハラ的な言動も決して珍しくはなかった、というより、ハラスメントという概念すらありませんでした。

 それでも、そうした状況を耐え抜けば、年功序列で昇給・昇進が保証されていましたし、定年後まで安定した人生が約束されていました。だから頑張れたのです。ところが、いまやそれらは空手形になってしまいました。

 ワークライフバランス、年功序列の撤廃、定年再雇用、ジョブ型雇用、副業・兼業解禁など、令和のここ数年の間に、平成の30年間で変われなかった昭和型の常識を覆す新たな動きが、急ピッチで進みました(人事の変化について詳しく知りたい方は、拙著『人を活かす経営の新常識』(Feelworks)を参照ください)。

 さらに改正高年齢者雇用安定法(2021年4月1日施行)では、企業に70歳までの雇用延長を求めるだけでなく、業務委託で独立して働く道など、雇用以外の選択肢をシニア社員に提供し支援することが、努力義務として求められるようになりました。

 このように会社と社員の関係、会社で働くことの意味が大きく変わってしまったのです。今までの常識が非常識になり、非常識だと思っていたことが常識になってしまいました。

 企業側にとってもこの変化には戸惑いが大きいもの。自らの意志で積極的に変化を仕掛けていく企業はあくまでレアケースで、特に歴史ある大企業は、かつてのやり方では生き残っていけないから、新しい動きに対応せざるをえない状況にあります。企業も自信を失っている。それが今のミドルを取り巻く環境にそのまま反映されてしまっているのです。

 だから今、多くのミドルは被害者意識にとらわれてしまっています。「時代のせいだ」「会社に裏切られた」……そんな思いが頭を巡り、鬱々としています。