「この株は売り? それとも買い?」「儲かる株はどっち?」まるで投資シミュレーションのようにクイズを解きながら「株で勝つ技術」を身につける画期的な1冊『株トレ――世界一楽しい「一問一答」株の教科書』が発売された。著者は、ファンドマネジャー歴25年、2000億円超を運用してTOPIXを大幅に上回る好実績をあげたスペシャリストの窪田真之氏。窪田氏に、2022年の相場動向と注目するテーマを聞いた。
チャートを見て変化に早く気づくことが大事
──2022年は、引き続きコロナに関する不安があり、参議院選挙や東証の市場再編といった大きなイベントも控えています。窪田さんは市場動向についてどのように見ていますか。
窪田真之さん(以下、窪田):予断を持たないことが大事だと思っています。ストラテジストは来年は強いですとか弱いですとか言いますが、それも結局のところ先入観です。
個人的には、日本株は割安ですし、急に世界の景気が悪くなることもないと思いますので、日本株は上昇するだろうというのが私のメインシナリオですが、自分で考えたそのシナリオですら、私は自分では信用していません(笑)。
──予想するより、予想に捉われずに対応していくことが大事なのですね。
窪田:そうです。変化に誰よりも早く気づき、その流れについていくことが大切です。では、変化にどうやって気づくかというと、ファンダメンタルズ分析で気づいてもいいのですが、ほとんどの場合はチャートを見るほうが早く気づくことができます。
AI、バイオ、脱炭素に注目したい
──注目しているテーマはありますか?
窪田:まずはAIやIoTなどテクノロジー関連です。今は大量生産でモノが余る一方で良質なサービスが不足しています。医療、介護、保育、警備などあらゆる分野で良質なサービスを安く大量に提供していくことが求められるため、人間にしかできなかったサービスを代替してくれるという点で注目していますし期待もしています。
2つ目はバイオ関連です。バイオというと近年はワクチン関連が注目されますが、私はバイオ医薬品が面白いと思っています。従来のような化学物質から作る医薬品ではなく、生物の働きを使って作るのがバイオ医薬品。がん、ウイルス性疾患、アレルギー性疾患の治療で今後ますます注目が高まると思っています。
3つ目は脱炭素関連です。株式市場で、ESGの視点で、買われる銘柄・売られる銘柄の二極化が起こっていますが、一部に行き過ぎがあると思います。EV関連は過大評価だと思います。ESGバブルの可能性もあると思います。
一方、LNG関連は過小評価でそこに投資チャンスがあると思っています。脱石炭を進める切り札となるのは天然ガス・LNGであり、今後、不当に売り込まれたLNG関連の見直しがあると思います。出力不安定な自然エネルギー発電を増やすにつれて、調整電源としてのLNG火力の価値が高まるのは必須と思います。
──日本株全般についてはいかがでしょうか?
窪田:米国市場と比べると国内市場には成長株が少ない気がしています。例えば、IT関連は世界に通用するようなインフラを作っている会社がなく、狭い国内で似たような事業を複数の会社が手がけている過当競争の状況だと感じます。
ただ、日本の小売やサービスは非常に品質が高く、消費力が伸びているアジアで競争力を持っていますので、その関連は成長すると思っています。
日本市場には高成長株が少ない一方、とんでもない激安株がたくさんあることが特筆に値します。米国市場にも割安株はありますが、日本ほど極端な激安株は見当たりません。PBR0.5倍くらいでキャッシュが十分にあり、利益もきちんと伸びている。そんな激安株が、はやりの成長テーマに乗らないというだけで投資家に見向きもされずに放置されています。
そういう株が見直されて大きく上昇する可能性もありますが、それがいつかは誰にもわかりません。ただ、そうなる時には、その動きがチャートに現れます。しっかりチャートを見ていれば、伸びていく株を見つけ出せるチャンスは十分にあると思っています。
楽天証券経済研究所 所長兼チーフ・ストラテジスト。
大和住銀投信投資顧問などを経て、2014年より楽天証券経済研究所チーフ・ストラテジスト。2015年より所長兼務。日本株ファンドマネジャー歴25年。年間100社を超える調査取材をこなし、公的年金・投資信託・NY上場ファンドなど20代で1000億円以上、40代で2000億円超の日本株運用を担当。ベンチマークである東証株価指数(TOPIX)を大幅に上回る運用実績をあげてきた。楽天証券では2014年から現在まで、同社投資メディア「トウシル」にて月曜日から木曜日まで「3分でわかる!今日の投資戦略」を連載。月間200万ページビューを超える人気コラムとなっている。主な著書に『株トレ 世界一楽しい「一問一答」株の教科書』(ダイヤモンド社)がある。