経営者や著名人に圧倒的な信頼を得るインタビュアーの宮本恵理子さん。一瞬で相手の心をほぐし、信頼を得る宮本さんの聞く技術についてまとめた新刊『行列のできるインタビュアーの聞く技術 相手の心をほぐすヒント88』では、相手の心に寄り添い、魅力を良さを引き出す宮本さん独自の技術をふんだんに盛り込みました。今回は、宮本さんが業界のキーパーソンと「聞く技術」をテーマに語り合ったオンラインイベント「聞く技術フェスティバル」の内容を紹介します。聞くフェス1回目のゲストにお招きしたのが、宮本さんがエクゼクティブ・ライターを務めるPIVOT株式会社の創業メンバーであるCEO(最高経営責任者)の佐々木紀彦氏とチーフSDGsエディターの竹下隆一郎氏。ジャーナリストとして活躍する3人が、三者三様の「聞く技術」について語り合った。(構成/関戸大)

■鼎談1回目>「「聞く」は最強のアンチエイジング!聞く技術が高ければ人は老けない」

ひろゆきに学ぶ議論を深める「問う技術」2021年11月に開催された聞く技術フェスティバル2021
ひろゆきに学ぶ議論を深める「問う技術」行列のできるインタビュアーの宮本恵理子さん(右)と、PIVOT株式会社創業メンバーでチーフSDGsエディターの竹下隆一郎氏

宮本恵理子さん(以下、宮本) メディアにおいても、「聞く」技術のあり方が大きく変わりつつあるように感じています。これからの「聞く」は、どう変わると思いますか?

佐々木紀彦さん(以下、佐々木) これまでのメディアの「聞く」コミュニケーションを極端にタイプ分けすると、相手を刺激して怒らせるか、忖度しまくるかのどちらかだったのではないでしょうか。相手を怒らせるにしても、忖度するにしても、結局はきちんと相手と向き合っていませんよね。フラットな関係で相手の魅力を引き出しつつ、良い質問、鋭い質問をする方が素敵だと思います。大人のコミュニケーションをしたいですよね。

竹下隆一郎さん(以下、竹下) これまではインタビュー相手を「材料」として見ている印象が強かったのでしょうね。

宮本 相手の意外な面を引き出そうとして相手の心の扉を無理矢理開けて、言葉を引っ張り上げてしまう。それだと本当に相手が傷ついてしまうんですよね。私たち3人がメディアの世界に入った頃は2000年前半ぐらい。その頃はネットもそこまで普及していなかったから、取材を受ける側の立場が弱かった。

佐々木 メディアが特権階級だった時代ですね。

宮本 かつては記事の「見出し」をインタビュー前から想定し、取材相手に対して「この言葉をもらいたい!」という言葉だけを都合よく掲載する、ということが成立していましたからね。

佐々木 そういう意味で最近、ひろゆきさんに注目しています。彼はなぜ、あれほど受け入れられているんでしょうね。彼には「聞く」技術があるのでしょうか。「聞く」技術なのか、「議論する」技術なのか、「ひろゆきさんが象徴しているものは何か」という問いは現代を知る上で大事だなと思います。

宮本 先日ひろゆきさんの対談を見たのですが、相手をまったく否定しないんです。ひろゆきさんは相手を論破するイメージがありましたが、実際にはそうではない。むしろ問いかけているんです。

佐々木 「こういうファクトがありますけど、どうなのですか」と問う。ジャーナリストみたいなスタイルなのでしょうか。

宮本 そうかもしれませんね。ファクトに対するご自身の解釈に基づいて素直に聞いているのでしょうね。竹下さんはどういう印象ですか。

竹下 これまでのジャーナリストは無色透明な客観的な地点から相手の話を聞いていたと思います。当時はそれで良かったんでしょうね。「ジャーナリスト=聞き手」という暗黙の了解があったから。けれど今は、聞き手が「自分はこういう立場です」「自分はこう思っています」などと明確に立ち位置や意見を表明しないと、聞き手も話し手も話せなくなったのかもしれません。

 そういう意味でも、ひろゆきさんは自分はこう思うけれどどうなのか、と質問している。聞き手としての立場が明確な気がします。

佐々木 ひろゆきさんが実践しているのは、きっと「問う」技術なんでしょうね。自分の見地から鋭い問いを相手に投げかけて深掘りする。一方で、宮本さんが実践しているのは、相手に寄り添い、良いところを引き出していく「聞く」技術。「聞く」技術と「問う」技術は分けて考えた方がよさそうですね。
(2022年1月8日公開記事に続く)