行列のできるインタビュアーの聞く技術
――著者からのメッセージ
「聞いて、書く」――。私がその仕事の面白さに出会い、早くも20年が過ぎました。
音声入力や自動筆記の技術は日々進歩し、誰でも自由に発信できるプラットフォームも広がった今の時代に、「インタビュアー」という職業はその意味を問われる岐路に立たされています。
「またあなたに話を聞いてほしい」「あなたに話を聞いてもらうと、いつもより自分を表現できる気がする」そう言っていただけることが、私のやりがいの一つであり、いつしか目標となっていました。一方で、記事や本を書くために行うインタビューの技術は閉じた空間の中で、“自己流”で磨かれることが多いため、誰でも応用可能なメソッドとして伝承されにくいという課題があったと感じています。
私は幸い、「聞いて、書く」仕事の機会に多く恵まれ、同業の先輩方、そして目の前で話をしてくださる方々からも学んできました。この本は、私が述べ2万人以上のインタビュー経験から抽出した「聞く技術」のエッセンスを全部公開したものです。また、10期を超えて続けてきたインタビュー&ライティング講座の受講生の皆さんからいただいたリアルな疑問点や不安の声をもとに、その解消のヒントを書きました。すでに読んでいただいた方からは、「ライターという職業ではないが、仕事上のコミュニケーション全般に活用できそうです」「家族と話をするときにも役立っています!」と嬉しい反響をいただいています。
どなたでも今日からすぐに試せるノウハウを中心に集めていますので、ぜひ日常のさまざまなシーンに取り入れていただきたいと思っています。聞くことで開かれる新しい世界を、一緒に楽しみませんか?
宮本恵理子(みやもと・えりこ)
インタビュアー・ライター・編集者
1978年福岡県生まれ。筑波大学国際総合学類卒業後、日経ホーム出版社(現、日経BP)に入社し、『日経WOMAN』などの雑誌編集・取材執筆に携わる。2009年末にフリーランスとして活動を始め、主に「働き方」「生き方」「夫婦・家族関係」のテーマで人物インタビューを中心に執筆する。編集者として書籍、雑誌、ウェブコンテンツなども制作。主な著書に『大人はどうして働くの?』『子育て経営学』『新しい子育て』(日経BP)など。家族のための本づくりプロジェクト「家族製本」主宰。2021年夏より、佐々木紀彦氏が立ち上げた新会社PIVOTに、エグゼクティブ・ライターとして参画。インタビュー&ライティングを手がけた書籍は『14歳の自分に伝えたい「お金の話」』(藤野英人著・マガジンハウス)、『失敗を語ろう。』(辻庸介著・日経BP)、『Be Yourself』(川原卓巳著・ダイヤモンド社)、『ぜんぶ、すてれば』(中野善壽著・ディスカヴァー・トゥエンティワン)、『Third Way』(山口絵理子著・ディスカヴァー・トゥエンティワン)、『これだけで、幸せ』(小川糸著・講談社)、『ものがたりのあるものづくり』(山田敏夫著・日経BP)、『「組織のネコ」という働き方』(仲山進也著・翔泳社)、『ご機嫌剛爺 人生は、面白く楽しく! 』(逢坂剛著・集英社)など。
【本書のポイント】
(1)一瞬で相手に信頼される「聞き方」の技術、満載
(2)数々のチャート図で「聞き方」を図式化してわかりやすい
(3)場づくり、声がけ、相槌……全部、今日から実践できる
(4)インタビュー初心者でもすぐに取材に行ける!
■目次■
■第1章 人生と仕事に効く「聞く技術」
さまざまなシーンで役立つ「聞く技術」
「自慢するのは気が引けるような実績」を聞く
「ダメダメ経験」も魅力的に引き出す
大切なのは、聞き手と話し手の信頼関係
■第2章 「聞く力」を何倍にも膨らませる事前準備
事前準備は最低限の礼儀
著書と取材記事は最新と特定時期を重点チェック
SNSで日常の関心事をチェック
資料は「2度」読む
■第3章 話を聞き出す「環境」のつくり方
「時間」「場所」「環境」が違えば、聞き出せる話も変わる
相手の「ホーム」を訪ねよう
「座る位置」にも配慮を
深く聞ける効果アップ! 5つのアイテム
■第4章 インタビュー開始5分で信頼してもらう
「安心して話してもらう」ための3点説明
話し手と呼吸のリズムを合わせる
重要! 聞き手と話し手をつなぐ「地点合わせ」
人物ストーリーを聞くのに有効な「あなたの年表」
■第5章 「聞く」がはかどるメモの取り方
「メモは紙一択」の理由
左側に話し手の回答、右側に浮かんだ質問
手のひらサイズのサブノートの出番
脱線歓迎! 事前に用意する質問は5つまで
■第6章 質問せずに、本音を引き出す
話の流れをつくる「4つのリアクション」
言い換えや比喩で「言語化のアシスト」を
間違ってもいい!「自分なりの解釈」をぶつける
沈黙は怖くない、「待ち上手」になろう
■第7章 オンラインで深く聞く7つのコツ
■第8章 インタビュー企画書のつくり方
■インタビューQ&A